クロスツェルの受難 A
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します。実は……」
もちろん、バカ正直に全部を打ち明けるわけがない。
そんなことをしたら、真偽以前に冒涜罪確定で、処刑台へまっしぐらだ。
プリシラには、東区の教会で浮浪児の少女を救えなかったこと。
未熟さを恥じて国内巡礼を始めたこと。
アリア信仰に反抗する意思はないことなどを、切々と語った。
ほとんどが作り話でも、あながち嘘とは言えない内容だ。
説得力に欠けるとは思わないが。
「……そういうこと。貴方らしいと言えば貴方らしいけど、それならせめて担当していた信徒達には挨拶くらいしておくべきだったんじゃないかしら。神父としては大失態よ、クロちゃん」
「返す言葉もありません」
プリシラは、「ふむ」と考え込んだ様子で、椅子に座り直した。
自分も扉を閉めて、机の前に立つ。
「良いわ。委員会のほうは私が抑える。で? 貴方がここに来た目的は何? 貴方に預けていた東区の教会へ戻りたいのかしら? それはダメよ。ちょっと前に別の神父を派遣しておいたから」
さすが、仕事だけは早い。
仕事だけは。
「国外への巡礼許可を頂きたいのです。ご協力願えませんか?」
「……ふぅううう〜〜ん……? この私に、お願いするのね?」
「はい。貴女以外に頼れる人脈が無かったので」
紅色の唇を愉快そうに歪めて、机の上に両腕の肘を置き。
重ねた手の甲の上に顎を乗せ、猫を思わせる無邪気な瞳で私を見る。
悪巧みをしている時の、彼女のクセだ。
うう……。胃が痛い……。
「何が良いかしら?」
「清掃員などはいかがでしょう? あれはあれで、なかなか味が」
「ダメね。全っ然、ダメ。貴方が清掃員? ちっとも魅力を感じないわ!」
「では、ゴンドラの」
「却下」
ああ、どうしても嫌な予感しかしない。
アーレストといい、貴女といい。
どうしてそんなに、私で遊びたがるんですか。
「ん〜……。そうねえ…………」
プリシラは、かつてなく妖艶な笑みを浮かべ。
ありえない処刑宣告をしてくれました。
ベゼドラを別行動させておいて、本当に良かった。
リース、貴女は見なかったことにしてくださいね。
お願いします、本当に……。
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