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逆さの砂時計
クロスツェルの受難 A
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察しなさい」
 ああ……知らぬ間に借りを作ってしまったのか……。空恐ろしい……。
 「ありがとうございます、プリシラ。正直にお話します。実は……」
 勿論、正直になど話せる訳がない。
 東区で少女を一人救えなかった事、未熟さを恥じて諸国巡礼を始めた事、アリア信仰に反抗する意思は無い事を切々と語った。
 殆ど作り話でも強ち嘘とは言えない内容だから、説得力に欠けるとは思わないが……。
 「……貴方らしいと言えば貴方らしいけど……それなら、せめて信徒に挨拶くらいはするべきだったんじゃないかしら? 神父としては失態よ、クロちゃん」
 「返す言葉もありません」
 プリシラはふむ……と何かを考えて、椅子に座り直した。
 自分も扉を閉めて、机の前に立つ。
 「良いわ。委員会のほうは私が抑える。で? 貴方が此処に来た目的は何? 東区に戻りたいのかしら。それは駄目よ。別の神父を強制派遣したから」
 さすが、仕事だけは早い。仕事だけは。
 「他国への巡礼許可を頂きたいのです。ご協力くださいませんか?」
 「……ふぅうううーん……? 私に、お願いするのね?」
 「はい。貴女しか頼れる人脈が無かったので」
 紅色の唇を愉快そうに歪めて机に肘を置き、手に顎を乗せて私を見る。悪巧みの時の癖だ。
 う……胃が痛い……。
 「……何が良いかしら?」
 「……清掃員とかはどうでしょうか? あれはあれでなかなか味が……」
 「駄目ね。全然駄目。貴方が清掃員? ちっとも魅力を感じないわ!」
 「では、ゴンドラの……」
 「却下。」
 ああ……どうしても嫌な予感しかしない……。
 アーレストといい貴女といい、何故私で遊びたがるんですか。
 「……そうねぇ……」


 プリシラは……かつてないほど妖艶な笑みを浮かべて、ありえない処刑宣告をしてくれました。ベゼドラを別行動させておいて本当に良かった。
 リース。貴女は見なかった事にしてくださいね。
 お願いします……本当に……。


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