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第一章
黒魔術師松本沙耶香 魔鏡篇
魔都東京。この街は夜も美しい。
その魔都に今一人の堕天使がいた。彼女は夜の闇の中にその妖艶な美を見せていた。
切れ長の奥二重の黒い瞳を持っている。その瞳の輝きは琥珀のものであり闇の中にえもいわれぬ妖しく美しい光を見せている。
顔は細面で白い。雪の色をしている。それが闇夜の中に浮き出ている。目だけでなく鼻も唇も整っている。鼻は高く見事な形をしている。唇は小さく紅の色だ。まるでルビーの様である。
髪は一見すると短い。だがそれは違う。長い腰までの髪を頭の後ろで束ねそれでまとめているのだ。そのせいで首の後ろのうなじがはっきりと見え艶を露わにさせている。耳も見えているがその耳もまた実にいい形をしている。
背は高く豊満な胸と引き締まったウエスト、それに形のいい見事な尻はモデルや女優といっても超一流の域にあるものだ。その見事な容姿を黒いスーツとズボンで覆っている。靴も黒でありそれは闇の中に消えるものだ。だがそのブラウスは白でありネクタイは赤だ。その彼女が闇夜の魔都の中にいた。
この美女は闇の中を歩きながらだ。ふと足を止めた。そうしてある店の中に入った。そこは奥に樽が並んでいるバーだった。店全体が暗くカウンターの棚には様々なボトルが置かれている。そしてタキシードの美女がカクテルを作っていた。美女はそこにやって来たのだ。
客は七人程だった。カウンターに三人程度、そして席に三人か四人である。男もいれば女もいる。彼等はそれぞれ酒を飲んでいる。
美女はそのカウンター、バーテンダーの席に座った。見れば白いブラウスに黒い蝶ネクタイとベスト、タイトのミニといった姿だ。脚を包むストッキングも黒だ。黒い髪を横で束ね切れ長の目をした小柄な美女である。
その美女の前に座ってだ。そのうえで言うのであった。
「バカルディを頼めるかしら」
「バカルディをですか」
「そうよ。バカルディ=カクテルよ」
微笑んでそれだというのである。
「それはあるかしら」
「はい」
バーテンダーは美女に対して静かに頷いて返してきた。
「できます」
「それではそれで御願いするわ」
また言う美女だった。
「まずはそれをね」
「最初にバカルディですか」
バーテンダーは彼女のその注文に驚いたようであった。その整った顔は表情を見せはしない。だがその大きな黒い目の光にそれを出していた。
そのうえでだ。彼女に対して言うのであった。
「随分と御存知なのですね」
「何についてかしら」
「お酒のことに。それに」
「それに?」
「夜のことに」
それもだというのだ美女が知っているのは酒だけではないというのだ。
「随分と御存知なのですね」
「夜は私の中にあるもの」
美女
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