外伝
外伝・少年の目指すモノ
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誰か大人の人をと思いたったが足が竦んでしまい動けなった。
そうしているうちに、化け物がその体のけむくじゃらの数本を勢いよく伸ばし、その女の子にぶつけようしていた。危ない、と思った。思っただけで自分の体は何も動かなかった。車と同じくらいの速さで伸びてくる触手が、女の子の体を貫こうとした瞬間、彼女が何か口ずさんだと同時にその手に持つ杖が振られた。思わず、彼女が貫かれる想像をしてしまい目を瞑った。
工事現場とかでしか聞こえないような轟音が鳴り響いた。
数秒して、目の前に体を貫かれ血まみれの女の子の姿を予想しながら、そっと目を開けた。
予想は覆された、そこにいたのは触手の一本が千切れ跳び、痛みか或いは怒りで呻き声を上げる化け物と、傷一つなく悠然と佇む女の子だった。目を瞑っていた間に何が起きたのかは分からなかった。ただ、化け物が敗者であり、女の子が勝者であること、それだけは分かった。
化け物が体をうねらせながらながら再び、触手を伸ばしてきた。今度こそは何が起きたのかを見逃さないようにしっかりと目を開けておく。さっきの繰り返し、同じように女の子の体が貫かそうになる。女の子は杖を振る。
今度は確かに視界に捉えた。化け物の触手の真ん中あたりが吹き飛んだ。さっきの轟音はこの音だった。自らの触手が千切れ跳んだことに気が付いた化け物は再び呻く。
そこからは一方的だった。
女の子が杖を振る度に、化け物の体は削れていく。このままなら、圧倒的に女の子のほうが有利だった。
だけれど、女の子が杖を振る回数が十、二十と増えていく毎に段々と女の子の息が上がってきているのが分かった。一方、化け物の方は触手が何度も千切れようとも、体がいくら削り取られようとも、あっという間に再生していた。その子は息が上がるのを通り越して、フラフラと今にも倒れそうになっていた。
それでも彼女は、諦めない。
立っているのも辛そうな表情をしている、杖を振る腕がひどく重そうに見えた。今にも意識を失い、閉じてしまいそうな瞼を擦り、強引に自分を振るい立たせていた。時々、化け物の触手が掠り、上等そうな仕立ての洋服にも細かい傷が生まれ、よく見れば所々に黒い染みが出来ていた。血だ、ついに化け物の攻撃は彼女の身体に通り始めていた。
体中ボロボロになり、意識を保っているのが奇跡ではないかと思える程の状態であっても、彼女の目は化け物から決して逸れることはなかった。
俺はその時、彼女の目が輝いているとそう思った。水面に反射する太陽光のような煌びやかな輝きではない。もっと燃えるような、マグマのようにしつこく粘り強く、それでも美しいと呼べるような輝きを見た。
その輝きに見惚れた。
気が付けば、何か意味の無い雄たけびを上げながら彼女の前に飛び出ていた。固く凍
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