遭遇
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…いきなり大声出さないで! 呼気で飛ばされちゃう!」
「すみません。……それで、レゾネクトとアリアはどうしたのですか?」
手首で涙を拭い、ふるっと首を振ってまた俯いた。
「分からない。魔王が来て直ぐに吹き飛ばされて、遠目にも見ていられたのは僅かな時間だったから。……ただ……」
「ただ?」
一度私を見上げて、また俯いて。
これは……言って良いものかどうか悩んでいるのだろうか?
少し躊躇い、一つ頷いてから、私に視線を合わせる。
「アリア様が泉で眠られたのは、ご自分の力を世界から隠す為だったの。だから、魔王に起こされて酷く動揺していたわ」
「世界から力を隠す為?」
「泉は……静謐の泉は、別名・水鏡の泉。世界を映し、跳ね返し、内側に抱いた物を隠す性質があるの。アリア様は其処で数千年眠っていて……本当はこの先もずっと眠っていた筈なのに……」
しゅんと落ち込む精霊。
ベゼドラに目を向けると、彼も何か考えているのか……じっと地面を睨み付けている。
数千年前、隠れるように眠ったアリア。
レゾネクトによって目覚めさせられたのは十何年か前。
ルグレットさんがアリアの記憶を消したのは数年前。
ルグレットさんの件にレゾネクトが関わっていた様子は無い。
当時は既に別行動していた? 別行動した上で、別人になってまで死を望んでいた。
……アリアは……レゾネクトから逃げていた?
「その泉の場所は判りますか?」
精霊が肩を震わせた。
「判る……けど……」
見るからに怯えた表情。
しかし、念の為に確認だけはしておきたい。居る可能性は低くても、零ではない筈だ。
それに……
「恐いと思う気持ちは分かりますが、貴女をこのまま見捨てるのも気分の良い話ではありませんので。遠くから確認だけでもしてみましょう? どうしても駄目なら引き返しますから」
手のひらの上でガタガタと怯え、言葉を失い……それでも、ぎこちなく頷いてくれた。
「ベゼドラも、それで良いですか?」
「嫌だ。……っつっても、説教で押し切るんだろ。どーせ。」
面倒臭そうに頭を掻きつつ、立ち上がって足に付いた砂を払う。
ご理解いただけているようで何よりです。
「案内をよろしくお願いします……って、そうだ。私はクロスツェル。連れはベゼドラと申します。貴女のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「……私はリースリンデ。リースで良いわ」
「では、私もクロスで。……方角から教えていただいても?」
リースはまだ震える手で木を、その向こうを指した。
国境沿いに在る西の森の、更に西。
それはつまり………
「国外、ですか」
それはちょっと予想外でした。
……内外の入出国許可、下りる
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