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逆さの砂時計
遭遇
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で良かった。これで背伸びしつつ待たなければいけないとなると、結構辛い。
 ところで、このまま雫が落ちても顔に掛かるだけなのでは……気を失っていても飲めるだろうか?
 「……っ ぷぇっ!?」
 あ。やっぱり。
 でも、驚いて飛び起きたから大丈夫かな?
 「な、なに!? なんで露? 此処は何処!?」
 羽を小刻みに震わせて、キョロキョロと辺りを見回している。
 目の色が紅い。ベゼドラとお揃いだ。
 「おはようございます、精霊さん。お体の調子はいかがですか?」
 「え? って……え!? 人間!? なんで人間が居るの!?」
 死にかけているとは思えない落ち着きの無さ。
 凄いな朝露効果。
 「昨夜、連れが貴女を叩きおと……いえ、ぶつかってしまって。すみませんでした」
 自分の手のひらに上半身を起こして座っている小さな女性に頭を下げる。
 端から見てどう思われるかは、あまり考えないでおこう。
 「……あ、そうか。背中から物凄い衝撃が来て、それで……」
 「お怪我はありませんか?」
 腕や背中や、立ち上がって足を見て……
 「大丈夫。ありがとう、人間。でも私、翔べないみたい。羽の感覚が殆ど無い」
 人間嫌いのわりにはちゃんと話してくれるらしい。お礼を言われるとは思わなかった。
 悪いのは、いきなり叩き落としたベゼドラなのだが。
 「ぶつかってしまった所為でしょうか?」
 「違う。私の力が残ってないの。泉に戻れば回復できるんだけど……戻れそうもないかなぁ……」
 泉? 精霊が住んでいる家、みたいなものか。
 「翔べないから?」
 「うん。もうずっと遠くに来ちゃったし、翔べなきゃ戻れない。それに、まだ居るかも知れないから近寄るのも恐いわ」
 両肩を抱いてふるふると震えている。
 よほど恐い思いをしたのか、顔色まで悪くなった。
 「泉? に、何が居たのですか?」
 「魔王レゾネクト」
 いきなり飛び出した名前に、木の根元で座っていたベゼドラ共々ギョッとする。
 驚いて手を動かしてしまいそうになるのをなんとか堪え、冷静を装おう。
 「……それは、いつ頃の話でしょう?」
 精霊は自らの右手を顎に当てて俯き……(しばら)く沈黙してから顔を上げた。
 「正確には分からない。必死で逃げてたから。もう十何年も前だっていうのは確かよ。いきなり現れて、眠っていたアリア様を起こしてしまったの」
 「! アリアが、貴女達の泉に居たのですか!?」
 「きゃあっ!」
 あ、しまった。つい大きな声を。
 これだけ体格差があれば聴こえる音量も人間とは違う筈だ。
 少しだけ尖った耳を抑えて座り込んでしまった。
 「……すみません。大丈夫ですか?」
 涙で紅い瞳を潤ませて、そろそろと私を見上げる。
 「……きーんってする…
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