虎と龍の舞う終端
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も、この大陸全ては許してくれません。それも、お分かりでしょう?」
沈黙が場を包む。雪蓮と白蓮は思考に潜るが、冥琳だけは鋭く目を光らせた。
「つまりお前は……妥協しろと?」
ばっさりと、朱里の思考誘導を切って捨てる。その先に見据えているモノに気付き、彼女は言の葉の刃を振り抜いた。
「妥協って?」
「雪蓮、こいつはな……我らに天下統一を夢見るなと言っているんだ。未来永劫互いは同盟国であり攻め入ることは皆無だと確約させたいらしい。腹の内を示しておいてその根拠が何処から来ることやら……よくもまあ口が回るモノだな諸葛亮」
「ああ……そういうこと」
小覇王の覇気が朱里に突き刺さる。虎の視線は鋭く強い。しかし小さな智者は目を逸らさない。微笑みも崩れなかった。
「あと三月で益州は落ちます。揚州の復興と荊州の二分化は半年もあれば落ち着きます。そうして天下三分は為るでしょう。半年の間に曹操軍が西涼を吸収した後で……曹孟徳を打倒するだけ。それで終わりに出来ればいいと思いませんか?」
「……ズルい言い方だな、そして今する話でも無いだろう?」
「いいえ、今だからこそしなければいけないんです。互いが牽制し合う関係である今だからこそ、その軛を外して呑み込んで頂かなければ私もあなたに猜疑心を持ってしまう」
「ほう……元からお前は信じていないだろう?」
「いいえ、信じています。天下三分ではなく……二分で妥協出来る人だと」
その言に衝撃を受けたのは白蓮と雪蓮。冥琳は口を僅かに歪めるだけに留めた。
どちらも軍師の思惑は聞いている。白蓮は冥琳の目論見の先に、雪蓮は朱里がピタリと言い当てた事に驚愕していた。
言葉を発せない。軍師の作る異様な空気に、今は口を挟むべきでは無いと二人の王は判断した。
「くっくっ……なかなか言うじゃないか。それこそ此処でする話では無いな」
「はい。これについては時間を以ってじっくりと話さなければなりません」
しかし軍師二人はそれ以上は見せなかった。
どちらも油断ならない相手で、まだ内側を見せるに値しない。力量は見て取れた、高め合うことは出来る。手を取るにしても……まだ時間が必要だった。
「どうでしょう? 私達は私達の、あなた方はあなた方の為に。答えは急く必要などありません。ただ……聴いて頂きたかっただけですから」
その言に含まれた意味を冥琳は間違えない。信頼は出来ずともいい。協力関係でいい。敵を打ち倒す為の共生期間で、必ず手を繋いで貰うから、信じて貰えるように私達が示して見せるから、と。
――桃香様ならお優しい言葉でそう言うだろう。私はそれをしてはいけない。あくまで道化の私は……疑念を抱かせ注意喚起して貰い、それでも尚、本当に信頼に足る相手だと行動と結果で見せないと
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