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乱世の確率事象改変
虎と龍の舞う終端
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の地でも噂は流れているみたいですし”」

 わざと朱里はそう言った。自分から開示した策の一つ。手の内の一つをわざわざ見せる利は言わずとも分かるだろう、と。
 情報操作によって曹操を悪と認定することで、曹操陣営の領地以外を敵対させ、侵略を行った場合の不可測を投げ込んでいた。不振の種さえ撒いておけばそれでいい。例え曹操が平穏に土地を治めようとも、侵略を行えば悪なのだから。
 事前に孫呉が手を打つ前に、他国にすらその手を伸ばしていると教えたのだ。
 自分達の土地に政治介入されて黙ってはいられないが、あくまで噂。策として行ったなどとは一言も言っていない。
 眼鏡の奥で、氷のような冷たい瞳が細まった。

――お前は悪龍と同じ匂いがするよ、諸葛亮。

 口に出しては言わない。信頼しようとは思えない。確かに有益ではあるが、掌に乗せられて転がされるのは気分がいいモノでは無いのだ。
 雪蓮も同じように、というよりはあからさまに朱里を睨んだ。
 ただ、二人の心を見透かして朱里が微笑んだ。

「私を信頼して頂けないのは分かっています。ですが、私達とあなた方が打倒しようとしているモノはどれだけの先手を打って万全を期しても良くて三割ほどの勝率しか見込めない最悪の敵なんですよ?
 周瑜さんは分かってらっしゃるはずです。曹孟徳が帝を手中に収めている限りこちらが悪と断じられ、黒麒麟が味方している限り民心はあちらに傾き兼ねません」

 何をバカな……白蓮は出かかった言葉を呑み込んだ。
 帝への信仰は言わずもがな、集まる情報を見れば見る程に秋斗の異常性が際立っていたから。
 自分の中でも答えは出ている。

――こと乱世に於いてだけは、桃香と秋斗では桃香の分が悪過ぎる。民心掌握の浸透度合いで言えば現場で戦っている秋斗の方が上。
 孫策なら同じだが、如何せん置かれた状況的に不利だ。

 戦わずに大徳と呼ばれている桃香は、治世でなければ力を発揮出来ない。
 語り聞かせ、絆を繋ぐ力は桃香の方が確かに上。不思議な魅力で人を惹きつける彼女は、平和な時間でこそ本領を発揮する。
 確かに民は平和を求めて抗うだろう。理不尽だと奮い立つだろう。けれども、秋斗や雪蓮のように“守っている”という事実が足りない。
 そして雪蓮は反旗を翻したという事実が残っている。いうなれば裏切り者だ。桃香と組むこと自体を矛盾とされかねない。

 白蓮の思考を読んだかのように、朱里が唇から言葉を紡いだ。

「血だらけになって戦い行動で示す黒麒麟と平和を望み和を説いている我が主、乱世ではどちらに利があるでしょうか?
 そして話し合うこともせずに居たモノが話し合いを掲げるモノと手を組む……其処に疑問を挟まないモノがいるでしょうか?
 孫呉の大地は許そうとも、荊州や益州が許して
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