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乱世の確率事象改変
虎と龍の舞う終端
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 幾分歩いた。
 他愛ない話を少々。途切れた所で夕暮れの空気の冷たさに頭も冴える。
 ほう、と誰でない一つのため息を合図に、その場は引き締まった。

「……今直ぐに答えを出すことは出来ないわ。善処するとだけ。それにまだ荊州の土地をどうするかも決まってないでしょう?」

 雪蓮が交渉を受ける側の王として口に出す。彼女の言葉は探りの意味も含めている。その証拠に、雪蓮がその長身で見下ろしているのは朱里。
 此処で他に動かしている策を話すか否か、例え白蓮に命を救われた恩があろうと、国を動したいのならそれくらいは示して貰わなければ、と。

「……各所豪族が挙って重要立ち位置に居座ろうとするでしょう。その為に先手として悪龍の娘、劉gさんを再度荊州に派遣しました」
「待て諸葛亮。劉gは呂布と繋がりがあったはずだ。二度目の反抗の可能性がある限りさすがに看過できんぞ」
「いえ、飛将軍とのつながりは断絶されています。劉gさんに至っても荊州を使って孫呉をどうこうしようという意思はありません。というよりかは悪龍自身が正義感の強すぎる娘を見捨てたので飛将軍と現在の荊州は敵対関係になります。それに“全滅させて自分だけ逃走した天下無双”に、軍を動かすだけの力を持たせるにはかなりの時間を必要とするでしょう。それに悪龍がどのような性格をしているか、あなた方ならご存知でしょう?」

 言われて思い出した二人は苦虫を噛み潰したように顔を顰めた。
 キヒヒ……と人を喰らう哂いが聴こえた気がした。
 思い出したくも無く、そして口に出すのも嫌になった。

「……聞くだけじゃだめね。会わないとその人間は見抜けない」
「ですので、一度荊州で会談をしてみるのは如何でしょうか。我が主、劉gさん、孫策さん、孫権さんには出席して貰いたいです」
「荊州で? 安定するまで待つのも問題じゃないかしら? 対曹操を念頭に入れてるっていうならだけど」
「その点については問題ありません。今回の戦で私兵など力の大半を奪われているので豪族達の反発はほぼ無く、正統な血筋が帰ってきたのなら抑え付けも容易い。元々から荊州の政治機構は安定していて文官の野心が繁栄され難いことと、“あの悪龍”の後釜に為るには民の民心掌握が大前提。
 今回戦に発展したのは悪龍に対する民心の裏付けでの煽動ですから、正統後継者もしくは劉の血しか受け入れられず……何より“覇王と黒き大徳の暴走”によって浸透し始めている恐怖が憎しみよりも安寧を求めさせます」

 つらつらと並べられた理由。冥琳はやはりかと唸った。

「儒教の否定と真名開示に袁家虐殺。荊州や益州でもあの戦の影響が?」
「はい。揚州にも西涼にも、それこそ曹操さんが治める土地以外でそろそろ不満が出始めている頃合いかと。“こ
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