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乱世の確率事象改変
虎と龍の舞う終端
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。戦うことなど考えてもおらず、そしてこの小さな龍は……

 ズキリと頭が痛む。
 少女の見た目であれど、諸葛孔明は間違いなく頭脳明晰な本物の軍師で、同盟国同士で戦を起こる可能性事態を事前に防いで来るのは予想に難くない。
 回り道に過ぎる。そちらの方が厄介だった。
 理由がなければ戦は出来ない。同盟を破棄するに足る理由は土地が脅かされない限り起こり得ない。こちらから裏切れば民の信頼が薄くなり、より一層拙い事態に陥る。
 それなら単純明快に攻めて来る曹操を相手にしている方が遥かにマシというモノ。軍師の本分としては遣り甲斐はあっても、現状では一歩も二歩も不利な状況に立たされている。

「私からも言わせて。ありがとう、公孫賛、諸葛亮」

 冥琳の高速思考の隙間に放たれた感謝の言葉。
 雪蓮がすっと頭を下げたことで、白蓮はふるふると首を振った。

「よしてくれ、私達は大したことしてないじゃないか」
「あの狂気の戦場で私だけを狙うモノを見つけて射抜いたのが大したことじゃないって、謙虚さとは言わないわよ」
「う……だって袁家だったらお前を狙うだろ? 張コウだったら多分……」

 途切れた言葉の続きは紡がれなかった。また一つ首を振る。

「じゃあ貸し借り無しで。私達は予告無しに無断でそっちの土地に軍を連れて入ってるし、同盟にしたってこっちの勝手な都合だ。負い目とか感じないでゆっくり考えて答えを出して欲しいんだ」

 キョトンと目を丸くした雪蓮はじっと白蓮を見つめる。
 蒼色の瞳に覗きこまれた白蓮がたじろぎながらも目を逸らさずに真っ直ぐ合わせた。

「……あなた、甘いのね」
「よく言われるよ。でもそれが好きだって言ってくれた奴が居る。堅苦しく考えすぎてたらゆっくりお茶も飲めないからさ」
「はぁ、なんだか毒気抜かれちゃったわ。
 ね、冥琳。別に気にしないで喋っていいわよね?」
「……お前は……まあいいだろう。こちらも気を張り過ぎているらしい。すまないな二人共。難しく考えるのは止めてみようか。だがな雪蓮、その袖に隠してる酒は飲むなよ」
「うぇ? あっちゃぁ、バレてた?」
「当たり前だ」
「気分いいんだからちょっとくらいよくない?」
「ダメだ。場をわきまえろ大バカもの」
「ぶー、ケチっ」

 その切り替えの速さに幾分驚いたのは朱里と白蓮だった。
 朱里は思う。きっと心の中では線引きを引いている。しかし、経験の差というモノが目に見えた。
 白蓮は何処となく昔に見た事のある光景に驚き、二人が緩く気を抜いたことで、くつくつと苦笑を漏らした。

――私と星も傍から見てたらあんな感じだったのか?

 酒好きな友とそれを咎める自分の図。きっと秋斗と牡丹に見えていた光景を今見ているのだと、少し心が温かくなった。

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