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乱世の確率事象改変
虎と龍の舞う終端
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感情を別にしても出来るはずが無い。

 異端思考に思えるけれども否。

 大陸の平穏という観点で見るならば、異常な知識を持つ秋斗を殺すことこそ智者にとっては間違いだ。
 例えば王一人を生かすのが臣下の務めであるように、国を生かすのに必要な人物として、朱里は秋斗を必要としていた。

 知ってしまえば抜け出せぬ泥沼。未来知識を知った彼女は、桃香の元で、秋斗と共に未来を作らなければ満足出来ない。

 此れは欲だ、と知っている。内のケモノが喚いていた。

――“どれだけの人間が犠牲になろうとも、壊されない平穏な未来を”……桃香様が敷いている無自覚の矛盾は、秋斗さんが壊れる元となった矛盾。どちらも一緒で、私は……

 秋斗が目指していたモノと同じモノを欲する彼女の中の龍は、誰にも知られぬこと無く育ち続けていた。


















 孫策軍と劉表軍の戦は両軍ともに多大な被害を出した。
 孫呉は主に人民という宝を傷つけられ、荊州は外部勢力への防衛手段である兵力を根こそぎ潰された。

 悪龍の意思を継いだモノは生きている。行方を捜索させてもやはり掴めず、殲滅戦の最後で離脱していった百の飛龍隊さえ居場所の特定が出来なくなった。
 孫呉の大地に残された爪痕は大きいが、飛将軍を退けた戦姫の名は大陸の端まで届く程になった。

 民は希望を向け、孫呉の大地の絆はより強固なモノとなって行く。
 ただ、危うさに気付いている者は朱里と冥琳だけ。

 血筋によって盤石な体制にしていく方向性が、余りに飛び抜け過ぎた雪蓮の名により一枚岩と化した……と。

 一時的な救援というカタチで助力を行い始めた白蓮と朱里はそのまま揚州にしばらく居座ることとなり、荊州と揚州の関係摩擦の改善にと勤しみ始める。

 悪龍の残した果実はこうして熟れ落ちた。
 虎は戦には勝った……が、新しき龍に借りを作り、同盟に対する主導権の大きな部分を奪われるというカタチで。

 まさしく、悪龍の予測通りに。





















蛇足   〜飛将と飛龍と〜


 深く暗い森の中。動物達の気配が色濃い大自然に囲まれた其処には少女が二人。馬が一頭。
 小さな鳥が赤い髪に乗った。肩にはリスが乗っていた。膝の上には犬と猫が、背中には赤い馬が横たわって。
 さざめき、囀り、木漏れ日、そよ風……休日にはこうしていたと、小さき軍師は思い出す。

 赤い髪の少女は動かない。
 人形のように虚空を見つめるだけで、瞳には何も映さなかった。

 小さき軍師の頬には泣いた跡が目立つ。赤く腫らした瞼と、未だにすすり上げる声からも分かるように、彼女は哀しみの淵に
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