虎と龍の舞う終端
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と冥琳も若干の穏やかさを取り戻し、歓談しながら戦場跡から軍を纏めた場所へと歩みを進めた。
ぐだぐだと話出した三人と共に、ゆっくりと朱里は付いて行く。
背が見える距離。彼女は夕暮れの空を見上げて、緩い空気を感じながらも別のことを考えていた。
ぶるりと震える身体に、頬が少しだけ熱っぽくなった。
こんな夕暮れに思い出すのは、いつも決まって一人だった。
――まだ、まだ。もっと……もっと織り込まないと。
戦を振り返れば不可測だらけ。自身の予想の甘さに恐怖を感じた。
飛将軍の敗北など完全な予想外。
――孫策さんがあの状況で生き残るとは思わなかった。でも、有能な人物が生き残ったことで有利になったのも事実。孫策さん存命時でも荊州の内政は誤差の範囲。むしろ孫策さんの今回の戦いは後々孫呉の頸を締めることになる。
出来れば天下統一の意思を挫く為に、と思っていたが此れはこれでいい。じっくりゆっくりと変えることも予定の内だった。
得てして自分の思い通りになど行かない。それを思い知れただけで十分。
ただ、最後の荊州兵の動きは予測通りで心がときめいた。
朱里だけは気付いている。
飛将軍と陳宮の関係は“あの二人”とそっくりなのだ。圧倒的な武力に追随させようとする兵士達。置いて行かれぬよう合わせられるよう手足として指揮をしなければならない。
絶対遵守の命令が無ければ作れないはず。従わせるには想いの共有が必要だ。それが例え、復讐心であろうと。
――出来上がった飛龍隊は“あの部隊”と同じ。戦い方は違っても在り方は同じ。それなら、あの結末は有り得た。
狂信は伝搬する。戦場では特に容易く。
今回の戦で学び、予測出来た戦のカタチがある。頭に浮かんだその戦に恐怖と畏怖と……愛おしさが胸に湧く。
――愛しいあの人は、乱世の果てに同じ戦場を作り出せるんだ。
兵士全てが死ぬまで止まらない最悪の戦争。主が死んでも死ななくとも“彼にとっての勝ち”が見えたなら、“兵士達だけを狂わせて”あの男は遣り遂げる。自分の命すら対価に乗せて。
――桃香様と白蓮さんは……否、私達の軍はあの人相手に、孫策さんと同じ選択が出来るだろうか?
知らない相手だから納得出来た白蓮は、きっと今回のことが起こり得るとは思っていない。
秋斗が最後まで抗うとは思っていない。勝ちの目が那由多の彼方であろうと賭けに出ると白蓮は考えていない。
朱里だけが気付いている事実。その最悪の事態にしないのが彼女の仕事。
今回のように……“敵軍を全て殺し尽くす”なんてことにならないように。
――あの人を殺す? どれだけの人間を犠牲にしてでもあの人は生かさないとダメな人なのに? そんなこと、私の個人的な
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