4部分:第四章
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第四章
「ここは日本のワインもいいわね」
「日本のですか」
「甲州ワインがいいわね」
沙耶香がここで選んだワインはこれであった。
「ここは」
「甲州ワインですか」
「ええ。それも好きなのよ」
そうだというのである。
「日本のワインだとね」
「日本のワインも飲まれるのですか」
「意外だったかしら」
「意外ではありません」
それは否定する彼だった。
「どんなワインでも飲まれると思いますので」
「そうなの」
「それでは」
さらに言う彼だった。
「それを用意しておきます」
「御願いするわね。それをね」
「しかし」
ここで男はまた言ってきた。
「それでいいのですか」
「その甲州ワインでということね」
「はい、思ったより安いですね」
こう言うのだ。実際に甲州ワインはフランスの高級ワイン等と比べればかなり安い。彼はそれを根拠として問うているのだ。
「それでいいとは」
「ワインは値段ではないわ」
だが沙耶香は微笑んでこう述べるのだった。
「ワインだけでなく女性もね」
「女性もですか」
「男性もだけれど」
思わせぶりな笑みになる。ここでは男はおろか女を篭絡することも好む沙耶香らしい言葉だった。そのことを言うのである。
「値段では全てはわからないわ」
「実際に味わってみないとですか」
「甲州ワインは絶品よ」
そして今それをはっきりと言った。
「それもかなりね」
「かなりですか」
「そうよ。日本の船だしワインはそれにするわ」
「完全にわかりました」
「ではそういうことでね」
「ああ、そして」
ここで今度は男の方から思わせぶりに笑って言ってきたのであった。
「一つ御聞きしたいのですが」
「何かしら」
「私についてはお尋ねしないのですね」
その笑みで沙耶香に言ってきたのである。
「そのことにつきましては」
「そのことにも安心していいわ」
沙耶香はその彼にその思わせぶりな笑みのまま述べてみせた。彼女もまたその顔に思わせぶりな笑みを浮かべて返したのである。
「それもね」
「依頼主の身元は既に把握されているのですか」
「全てね。何故なら」
「何故なら?」
「私は黒魔術師よ」
それが根拠だというのだ。
「黒魔術師の魔術の中にはね」
「その中には」
「相手の心を読むことができるものもあるのよ」
こう彼に話すのだった。
「それを使ったのよ」
「そうだったのですか」
「それも相手に気付かれることもないようにね」
それもだというのだ。
「できるのよ」
「流石ですね。では私の依頼をそのまま」
「受けさせてもらうからここにいるのよ」
こう彼に述べた。
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