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珠瀬鎮守府
響ノ章
金打
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また然り、と」
「少ナカラズ、私ヲ殺ソウトスルナラバ私ハ抵抗スル」
「その点は考慮しなくていいだろう。私達はお前を殺すつもりはない」
 姫は黙って此方を伺う。それが本当のことかを確かめるように。
「人類ト捕虜ノ交換ナゾシテイナイ。ッフ、私ヲ使ッテ実験デモスルカ?」
 姫が言っていることは、案外見当外れでもない。私は、そうなるだろうと思ってこの事を上部に秘匿している。勿論露見した場合私の立場だけでは済まない事態になるだろう。だが、それでも致し方ない。過去、深海棲鬼の実験をして、その施設を収容したただ一人の深海棲鬼に壊滅させられた事例も有る故に。
「そうだな、それに近い事はするだろう」
 姫の目に、私は確かに殺意を見た。後ろの伊勢たちも気がついたか、僅かに艤装の揺れる音がした。
「何、その体に何かをするということはない。私達にとって、姫という存在自体と会うことが殆ど初体験に近い。言わばそれが実験だ。それ以上の事はしない。それは確約しよう」
「ソレヲ、信ジロト?」
「信じてもらうために私が今ここにいる」
 部屋に初めに入り、そうして今こうして姫と間近に接しているのだ。今できるだけの誠意を見せている。
 姫は何が可笑しいのか、僅かながらに笑った。
「元ヨリ私ハ何カデキル立場デハナイダロウ」
「そうか。では、初めに幾つか聞いておきたいことが有る。姫よ、お前は深海棲鬼としての戦線復帰を望むか」
「否ト答エレバ嘘トナル。ダガ、モウ強イ執着ハナイ。言ウ成レバ腑抜ケタ。我ハアノ場デ死ヌト思ッタ時ニ、キット姫トシテノ大事ナ何カヲ失ッタノヤモシレヌ」
「我々の立場としても、お前を返す事は出来ない。また、この事を周知しお前を自由にすることもできない。それを踏まえた上で、お前は、生きていたいか」
「何ヲ。先、殺サレルナラバ抵抗スルト言ッタダロウ。アレハ姫トシテ戦ウト言ッタノデハナイ。死ニタクナイト言ッタノダ」
「ならば話は簡単だ。姫、一つここで約束をしよう」
 姫は黙って続きを促す。
「お前はこの鎮守府内から逃げ出さない。そうしてもし、我々以外の一般の兵員等に見つかった場合は何らかの嘘を吐く。そして何より、こちらに危害を加えない」
「随分ト都合ガ良イナ」
「その代わりと言っては何だが、お前が何かを望めば我々は可能な限りそれを実現しよう」
「ホウ、面白イ事ヲ言ウ。デハ早速コノ部屋ヲ変エテモラオウカ」
「ふむ、では今晩にでも変えよう。望みは何処だ? 今は空き部屋が少なくてな、完全な要望通りとまでは行かないが、それでも努力はする。海が見える場所何かがいいのか?」
 尋ねた私に対して、姫は何故か面食らった顔をしていた。
「どうした?」
「適当ニ難題ヲ吹ッ掛ケタツモリダッタガ、ソウモ簡単ニ叶エラレルトナルト心外ダ」
「言っただろう、こちら
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