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珠瀬鎮守府
響ノ章
金打
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「姫は赤煉瓦に今後も幽閉する。引き続き伊勢、日向にはその警備に当たってもらう」
「提督……あれをどうするつもりなの?」
 伊勢の質問に、私は考える振りをした。
「そうだな、元々、この鹵獲は柏木が第四艦隊に言い渡していたものだ。柏木自身、まさかこんな大規模な戦闘の中、まさか姫を鹵獲するとは思っていなかっただろう」
 話を逸らしながら、私は着地点を探す。
「私も一度、会っていみたい。折角だ、直ぐにでも行こうか」
「おすすめしません。武装解除したと言っても深海棲鬼です」
「その為にお前たちがいる」
「提督、貴方は、姫をどうするおつもりですか」
 繰り返しの質問に、私は正直に言葉を発するしかなかった。
「対話を図る。奇しくも既に木曾と奴は言葉を交わしているとか。ならば我々と出来ぬという道理はないだろう」
「今直ぐ殺すつもりはないと」
 私は小さく笑ってから、冗談でも言うように言った。
「何、客人のように振る舞おうではないか。あの日亡くなった柏木も、きっとそう望んでいる」
 伊勢達が言葉を無くしたのを見て、私は先の言葉を繰り返した。
「では、向かおうか」
 先陣を切る形で、私は赤煉瓦に向かった。


 鎮守府施設内に収容所の類はない。そもそも、人を監禁できるような設備はない。姫は、窓がない空き部屋に閉じ込められているだけだった。
 扉前の警備隊に退けるよう指示し、私は扉の前に立った。私の前に立とうとする伊勢達を手で制し、私は一度だけ扉を叩き、無言で取っ手を回し、扉を開けた。中では姫が椅子に座って此方を見ていた。
「当鎮守府の提督である白木だ。姫よ。今後の対応について話し合いたい」
 私は何か座る場所でもと探したが、姫が武器とすることを恐れてか机と繋がれた椅子一つ以外はこの部屋に座れそうな場所はなかった。私は立ったまま話そうと思ったが、姫は立ち上がりその場を移動した。移動した先は部屋の隅に置かれた二畳の畳。これは姫の簡易的な寝床とするために配置したものだ。
「腰ヲ落チ着カセテ話ソウカ」
 変なところに律儀なのか、或いは私と対等な目線で話がしたいのか姫はそう言い。私はそれに従った。僅か二畳の間に互いが座るので、危険といえばそれまでだが私は堂々と目の前に座った。
「それで、姫よ。何か言いたい事があったりするか」
「木曾ハドウシタ」
「助骨の数カ所の骨折、左足にも罅やら何やらで入院中だ。命に別条はない」
「ソウカ」
 嫌に木曾に拘る。
「なんでまたそんな事を」
「互イニ死ヌト思ッタアノ時、私達ハ互イヲ認メ言葉ヲ交ワシタ。共ニ黄泉路ニツコウ、ト。同行人ニ先ニ死ナレテハ困ル」
 単艦にて姫を含めた艦隊と交戦し、旗艦を後一歩のところまで追い詰めた。考えれば考える程、木曾の働きは鬼神じみている。
「そうか、つまり、逆も
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