べぜどらくんのしっぱい
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
全部を買う訳にはいかないし、仕方ない。
「この店のおすすめのパンは?」
店員の女に尋ねてみれば、女は満面の笑みを浮かべて答える。
「はい! 当店では、焼き方に拘りましたロールパンをぜひ、ご賞味いただきたいです!」
ろ……ロールパン、だと!?
慌てて商品を確認する。
余計な物が何も練り込まれていない、シンプル イズ ベストフォルム! 素晴らしい!
見た目の焼き加減も、やや卵系の丸っこい形も申し分無し。完璧だ。
トレーにそっと乗せて……これは……ふんわりと柔らかでありながらそのまま潰れるのではなく、やんわりと弾力を感じさせる手応え。生地の密度が程好い証拠だ。これは期待できそうだ。
「ありがとうございましたーっ」
ロールパンは、そのシンプルさ故に素材と掛けた手間が直で味に伝わる……職人にとっては難しい商品だ。それをすすめるとは、かなり腕に自信があるのだな。試してやろうじゃないか。
「……ふん」
なるほど、悪くない。
直に持ってみた感触も、噛んだ瞬間の歯の通りも、実に見事。
噛めば噛むほどほんのりと鼻を抜けるバターの香りは、くどくもなく、足りなくもなく。最後まで絶妙な均衡を保って喉に流れていった。
確かに、これは旨い。
だが、最高級と評するには塩加減が少々惜しい。
高級ではあるが、これでは……
「!! あっちか!?」
これで二十軒目だ。これだけ回っても見付けられないとは、さすが聖地。侮ってたのは俺のほうか?
いや、まだまだだ!
この手に……この口にするまでは絶対に諦めないぞ!
「……どうしたんですか? その顔。憔悴し切ってるみたいですけど……」
街に着いた時は昼間だったが、気付けば辺りはすっかり真っ暗。
待ち合わせた入り口で、クロスツェルが目を瞬いた。
「……なんでもない……」
そう……なんでもない。
普通にパンを食べ歩きしまくって。やっと見付けた香りの元。
その店が、営業時間を過ぎていただけ……。
辿り着く数分前に、終わってただけだ。
「? とりあえず宿は確保しておきましたから、行きましょう」
「……ああ」
さすがに、パン屋だけで三十八軒も在るとは予想外だった。何処もそれなりに旨くはあったが、食い過ぎで気持ち悪い。
違うと分かってても試したくなるんだよ。仕方ないだろ。
あー……今日はもう寝よう……。
「あ。そうそう」
先を歩くクロスツェルが、何かを思い出したように突然振り向いた。
「この街では卵料理も有名なのだそうです。やはり、水が良質な土地は食材が豊富ですね。ベゼドラが好きな卵焼き入りサンドイッチも、たくさん用意してくれてますよ。宿で」
「……なに?」
「ほら、あそこです。一階でパン屋、二階で
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ