九十 天才VS秀才
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「先に行かせて良かったのか?」
鬱蒼とした森と森の狭間。一面に広がる緑の海がざわめいている。
さざ波に靡く草叢の中、全体的に白い二人の少年が対峙していた。
「よく言う。最初からそのつもりだったのだろう?」
涼しい顔で問うた君麻呂に、ネジが眉を顰める。
ネジの返答を耳にして、君麻呂はふっと口許に笑みを浮かべた。双眸を閉ざして笑うその様は、一見無防備に見えて隙が無い。
君麻呂の言う通り、シカマル・キバ・いの達三人にネジは先へ行くよう促した。
リーダーであり司令塔でもあるシカマルを始め、サスケを追うのにキバの嗅覚は必要不可欠。
また、当初いのが指摘した、相手の人数より心の数が多い訳に関してもまだ判明出来ていないので、彼女も必要だ。
以上がネジ一人残った理由である。
尚且つ、未だ来ない波風ナルやヒナタの事も気掛かりだ。だからこそ、ネジは彼女達を助けに行ける地点での戦闘を望んだのである。
それがたとえ、音忍の中で最も強い相手だとしても。
「どうやら…追い忍の中で一番強いのは君のようだね」
「その言葉、そのまま返すぞ」
考えていた内容と全く同じ事を逆に告げられ、ネジは苦笑した。おもむろに手を掲げる。
独特の構えを取った相手の言動を君麻呂は静かに見遣った。自然体のまま、特に何も身構えず、悠然とネジの出方を待つ。
ざり、と足下の砂が音を立てた。
まずは様子見。
一気に君麻呂の許へ迫ったネジ。素早い突きが君麻呂を襲う。
その攻撃を優雅にかわし、君麻呂は眼を細めた。
普通の体術で勝負を仕掛けてきたネジに、「舐められたものだ」と嘆息する。
だが直後、彼は相手の掌底が普通の突きではない事に気づいた。
(この独特の動き…それにこの『眼』。なるほど、これが【柔拳】か…)
以前中忍第三試験の予選にて、日向一族同士の試合を観戦していた君麻呂。
宗家であるヒナタを容赦なく再起不能にした目の前の人物を彼はまじまじと見遣った。
予選の際は、運命や宿命という言葉に何もかもを諦め、酷く冷めた眼をしていたネジ。それが今や打って変わって、何処か吹っ切れたような眼差しで君麻呂を真っ直ぐ見据えている。
あの時とは真逆で、諦めという単語すら彼の瞳の奥には一縷も見受けられない。
「中忍試験時よりは、随分マシな眼になったな」
「……おかげさまで」
ぽつり、とした君麻呂の呟きを拾って、ネジは苦く笑った。
波風ナルとの対戦前の惨めな自分自身を思い出し、若干顔を顰める。そんな気まずげな思い出を吹っ切るように、彼は突きを更に高速で繰り出した。
連続の【柔拳】。ネジの怒涛の攻撃は、しかしながら無駄の無い動きで次々とかわされる。
(攻撃が当たらない…。身のこなしが上手すぎる…っ)
(変わっ
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