始まりと終わりの地
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「! やっぱり! 貴方は、あの子を知っているのね!?」
この少女の声は、アリアを『あの子』と呼んでいたのか。
嬉しそうに、必死そうに、悲しそうに、弾んでる。
「あの子は、アリアは今、どうしているの!? 闇に堕ちてはいない!?」
「闇? どういう意味でしょうか」
「私はアリアの為にこの空間を残したの。『結晶』はアリアの力に反応して機能する、空間の扉を開く『鍵』。訪れたアリアを、天の高みへと送り出す必要があったから」
扉……天の高み?
「あの歌が示していたのは、ここですか?」
宝石と共に託された不思議な歌。
その中にあった単語を思い出す。
「そう。歌はアリアに残した導き。『鍵』が道を示す為の呪文。『光と夜の境に満ちて、巡る祈りは天の高みへ。辿れ、朽ち行く聖の先を。扉はきっと開くだろう』。ここは神々が眠る世界へと繋がる唯一の『階』。神殿は、アリアを神々の元へ逃がす聖地なの」
「逃がす?」
「私は……どうしてもアリアを殺せなかった。それがどんなに危険なことか判っていても。わずかな間だけでも、人間として生きて欲しかったの」
『殺せなかった』?
アリアを殺そうとした?
この、少女の声が?
「お願い、アリアをここに連れて来て! 万が一、あの子が闇に触れたら、世界が取り返しのつかないことになってしまう! そうなる前に、早く!」
「……事情は分かりませんが、それは難しいです。私達が捜しているのは、そのアリアなので」
少女の声が、息を呑んだ。
「……そう……」
しばらくの沈黙と落胆の後、魚達の姿がぐにゃりと歪んだ。
空間を閉じようとしている。
そんな気配。
「待ってください! 貴女はアリアの、なに」
「私は、アリアを眠らせる為の、『扉』。あの子に会えたら……『結晶』を必ず……アリアに……渡し て。アルフ 達 が 命を 懸けて 護った 世界 を…… たす け……」
少女の声が小さくなっていく。
耳鳴りがする。
空間が閉じる。
鉄鍋の底で殴打されたような、鈍い痛みが全身を襲って……
「いい加減に起きろ、クロスツェル! 蹴っ飛ばすぞ!」
パチッと目を開いた。
視界いっぱいに広がる青い空と、濃い緑色の葉っぱの波。
それと、呆れた顔のベゼドラ。
「……もしかしなくても、私は今、倒れてますか?」
「ああ。答えるのも面倒くせえくらい、分かりやすく倒れてんな」
どこかの空間に移動した、のではなく、意識だけが飛ばされた?
宝石も本も、両手でしっかり抱えたままだ。
「貴方は、少女の声を聞きましたか?」
あの場所には、自分の姿しかなかったと思う。
一応尋いてはみたものの、答え
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ