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剣の丘に花は咲く 
ゼロの使い魔編
第十五章 忘却の夢迷宮
第七話 笑顔という仮面
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握り直し、ゆっくりとジョゼフへと歩み寄る士郎。
 絶体絶命。
 打つ手なしの状態であるにもかかわらず、ジョゼフに焦りは見られなかった。

「っふ……舐めるなよ“ガンダールヴ”ッ!」

 近づいてくる士郎の眼前に杖を突きつけるジョゼフ。
 膝をついたジョゼフの前には、士郎に貫かれた腕から流れたものが血溜りとなっている。赤い血の溜まったそこに、血とは別の赤い固まりがあった。

「……貴様」
「それ以上近づけば、杖を振り下ろす。詠唱は既に終わっているぞ」
「っ……」

 士郎が歯噛みする姿を前に、血に濡れたジョゼフは歪んだ笑みを浮かべた。

「ああ、ああ―――悔しいか“ガンダールヴ”。勝ったと思った直後の絶望に、さあ、何を感じる“ガンダールヴ”。それともイチかバチか試してみるか? おれが杖を振り下ろすのが速いか、お前がおれを殺すのが速いか……なあ、試してみるか?」
「…………」

 血を流し伏した姿で剣を握り立つ男を仰ぎ見る男。
 普通であるならば、士郎が追い詰めているように見えるが、現実はその反対であった。
 士郎ならば、瞬く間に詰めることが出来る距離ではあったが、ジョゼフには“加速”がある。もしも、あれが使えたならば、いくら士郎でも杖を振り下ろす前にジョゼフの動きを止める事は不可能であった。“爆発”と“加速”の魔法を同時に使えないとは考えられない。“虚無魔法”については謎が多すぎる。そんな楽観的な考えで、何万、何十万もの命を掛ける事は士郎には出来ない。
 だからといって、このまま指を咥えて見ているだけもまた、ありえない話である。

「……恐ろしいな。この状況でまだそのような目をしていられるとは。今も冷徹にこの場をどう制するか考えているのだろう」

 士郎に杖を突きつけ牽制していたジョゼフだったが、何故かふと、何時か浮かんだ疑問が口をついて出た。

「―――そういえば、“ガンダールヴ”……いや、エミヤシロウ(・・・・・・)に聞きたい事があったな」
「……何だ?」

 油断なくジョゼフの動向を見下ろしながら、士郎は続きを促す。

「貴様が以前、あの娘―――シャルロットと戦った時の事だ」

 ジョゼフの言葉に、士郎は思わず苦い顔を浮かべる。かつて魔法学院でタバサと戦った時の事を思い出したのだ。己の持つ全てを賭け挑んできたタバサ。最後は自身の命を囮に一矢を報いるためだけに氷の矢の雨に自ら飛び込む程にまでおいつめられていた。
 その元凶が目の前にいて、思い出さない筈がない。
 それに忘れるようなものでもない。
 
「それがどうした」
「あの時、お前はあの娘に言った言葉を覚えているか? 確か……『人が本当に幸せを感じた時に浮かべる笑みは、それを見た者さえ幸せにする』だったか? アレはどういうつ
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