ゼロの使い魔編
第十五章 忘却の夢迷宮
第七話 笑顔という仮面
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もらおうか」
そうジョゼフが口にした瞬間、士郎の背後の空間が揺らめいた。
「―――ッ?!」
背筋に走る寒気と直感に従い士郎はデルフリンガーを背後へと振り抜く。
ガキンッ! と鋼と鋼がぶつかる剣戟の音が響く。
「馬鹿―――なっ、ワルドッ!?」
風を纏わせた杖と鍔迫り合う士郎が、間近に迫るいるはずのない男の姿に驚愕の声をあげる。
「っ、こ、の―――、ぃっ!!」
デルフリンガーごと押し斬ろうとするワルドの人間離れした文字通りの怪力に顔を歪めながらも耐えていた士郎だが、チリリと産毛が逆立つような電流にも似た悪寒に、咄嗟に転がるようにその場から飛び離れた。
甲板の上を転がりながら距離を取った士郎が、起き上がり先程まで自分がいた場所を睨みつけると、そこには短剣を片手に持ったジョゼフが立っていた。
士郎とジョゼフの間には十メートル以上の開きがあった。それが僅かな間目を離した隙に距離を詰められていた。何らかの武術の達人ならばいざしらず、基本運動能力は常人と変わらない筈のメイジが魔法もなしでこの距離を士郎に悟られる事なく踏破する事は不可能である。
ならば考えられるのは一つだけ。
「……“虚無魔法”か」
「その通り虚無の一つだ。“加速”という魔法でな。文字通りただ単純に動きを加速させるだけの魔法だが、中々使い勝手はいいぞ」
短剣を弄びながら関心するように顔を上下に振るジョゼフの身体をさり気なく士郎が確認するも、何処かを痛めた様子は見られない。
士郎の世界にある魔術の中には、ジョゼフが使った“加速”と似た効果を持つ“固有時制御”というものがある。
時間操作の魔術を応用したものであり、簡単に説明すれば、“固有結界”を術者の体内に設定することにより、体内時間を操作する魔術であった。
これを使用すれば、体内時間をある程度自由に加速・減速することが出来る。しかし、その代償は大きい。結界が解けた際、調整された側の時間が外界の時間に合わせるよう世界からの修正を受ける為、加速・減速の程度に合わせ術者の肉体に負担がかかるのだ。
それは下手をすればそのまま死亡する可能性があるほどに。
しかし、士郎の見る限りジョゼフに何らかのダメージを受けた様子は見られない。
つまり―――
「―――制限なく使えると考えるべきか……厄介だな」
何かの縛りがあるのかもしれないが、楽観的な考えは即、死につながる。
ならば最初からサーヴァント並みの速度の相手は、もしくは空間転移の使い手と考えておけばいいだけだ。
それだけでも厄介であるのに、と考えながら士郎は背後に視線を移す。
そこには剣状の杖を隙のない構えで向けてくるワルドの姿があった。以前、ミョズニトニルンと共に
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