ゼロの使い魔編
第十五章 忘却の夢迷宮
第七話 笑顔という仮面
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に拘っていたのかが……」
どれだけ憎しみに染めた言葉を投げても変わらず真っ直ぐに自分を見つめる士郎を見上げていたジョゼフの目が、遠くを見つめるように細まった。
「顔も声も何もかも似ていないが……まっすぐおれを見るその目が、どことなくシャルルに似ているのだ。“ガンダールヴ”。確かにおれもお前と同じような事を考えていた時があった。努力した。誰にも認められなくとも、褒められなくとも、努力を続け―――それでも負けた。だが、それでいいと思った。それだけシャルルは優秀だった。何より優しかった。敗者であるおれにさえ何時も気を使っていた。嘲る事も、罵倒する事さえ一度足りともなかった。だから称えなければ。笑って祝福しなければならない……そう、思っていたのだ」
澱んでたいジョゼフの瞳に、過去を懐かしむ優しげな色が浮かぶ。
「―――だがな、それでも駄目だ」
だが、それは一瞬で淀みの中に儚く消えてしまう。
「駄目だったのだよ“ガンダールヴ”。時が経てばやがて己の中にある卑しい劣等感は消えると思っていた。しかし時が経てば経つほどに劣等感が、怒りが、憎しみが……澱のように積み重なっていくだけだった」
長年積み重なった澱みを映すかのような、暗い瞳で士郎を見つめながらジョゼフは笑う。
「それでもお前は言うのか? 『人が本当に幸せを感じた時に浮かべる笑みは、それを見た者さえ幸せにする』と」
士郎に向けられる仮面のような笑み。
硬い―――長い間積み重なり折り重なった澱みが造り上げた虚ろな笑みの仮面。
その仮面にはどのような言葉も通る事はなく、触れもせず通り抜けてしまう。
堅く虚ろで何も無い“虚無の笑み”。
「ああ」
それに、
「―――は?」
ピシリと罅が入った。
「それでも俺は言う」
「なに、を言っている」
ジョゼフの口元に浮かんでいたものは、既に歪み過ぎて別のモノへと変わっていた。
「どれだけ―――どれだけ貴様は愚かなのだっ。有り得ないのだそのような事は」
引きつり皺が寄るソレは、
「現におれはシャルルが笑う姿を見て一度足りとも笑えた事はないっ」
怒りに
「誰もが褒め称えるなか、それでも俺をたてようとするシャルルに、感謝さえ抱いた事はないっ」
憎しみに
「誰もが見捨て顧みることのなかったおれを唯一人真っ直ぐに見つめてくれたシャルルでもだっ」
劣等感に歪んだ今にも泣きそうな顔であった。
「それでもお前は言うのかっ! 敗者に笑えと、勝者を見て笑えとお前は言うのかエミヤシロウッ!!」
血を吐くような叫びだった。
虚ろな瞳が今は燃え盛る炎のような怒りに染まっている。
血が抜け青ざめた顔を
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