暁 〜小説投稿サイト〜
魔界転生(幕末編)
第15話 渦巻く暗雲
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
藤に顔を向けることなく言った。
「ここにいても高杉さんには会えませんよ」
伊藤はその男の横顔を見つめ答えた。が、伊藤には何故かこの男を見たことがあるように感じた。
「そうですか」
男は後ろを向き歩き出そうとした。
「もし、待ってください。何故、高杉さんに?」
井上はその男を呼び止めた。井上にも伊藤と同じ感じがするのだった。
「も、もしや、あなたは・・・・・・」
最初に伊藤が気づいた。
「あなたは土佐の武市さんでは?」
伊藤の言葉に井上は目を大きくして伊藤を見つめた。
(確かに土佐の武市瑞山だ。が、しかし、そんな、馬鹿な)
井上は伊藤の背中をつついた。
「うん?なんだ?」
伊藤は背中をつつかれたの感じ井上の方を向いた。
「おい、武市瑞山は死んだときいたぞ」
伊藤に耳打ちするように言葉を殺して言った。
「あっ!!」
伊藤は勤王党の事件を思い出した。が、しかし、目の前にいるのは、まさしく武市半平太その人である。
「い、生きていらしたのですか?武市殿」
伊藤は腰が抜けそうになるのを堪えて武市に言った。
武市は伊藤と井上の方に向き直ってにこりと微笑んだ。
「どこに行けば高杉殿に会えるのですか?」
武市はゆったりとした口調で伊藤と井上に問いかけた。
「高杉さんは今、病気療養のため会うことはかないませぬ」
井上も腰が抜けそうなのを必死にこらえ震える声で言った。
「ほう、病気ですか?で、どこを?」
武市は笑顔を崩さず言った。
伊藤と井上にはその笑顔がまた不気味に感じていた。何故なら、肌は白いのも関わらず唇の色がまるで紅をさしているように真っ赤なのだ。
「胸の病です」
井上も伊藤もまるで催眠術にかけられているかのように答えた。
「そうですか。では、私が良薬を作ってまいりましょう。では、これにて」
武市はくるりと踵を返すと雨の中へと消えていった。
伊藤も井上もただその後ろ姿を呆然と見送るだけしかできなかった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ