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逆さの砂時計
忘却のレチタティーボ 6
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は案内してやる。其処からは好きにしろ。二度とステラに関わるな」
 「俺らも小娘に用は無ぇよ」
 うわぁー……やっぱり分かりやすい人だなぁ。クロスツェルさんもだけど。
 アリア様、大変そう。
 「ありがとうございます。……すみませんでした、ステラさん」
 「あっ、いいえ……、はい」
 クロスツェルさんは、礼儀正しい分だけさっきみたいな行動が恐い。男の人を見掛けで判断しちゃいけない典型っぽいな。でも。
 「……ちゃんと会えると良いですね」
 アリア様のほうはあんまり会いたがってる感じじゃなかったけど。
 いや、会いたくても会えない……の、かな。訳ありなんだろう。
 他人の私が其処に介入するもんじゃないし、それこそどうにもできないんだけどさ。
 頑張ってる人の背中を押すのは、間違いじゃないよね?
 「いつか、貴方達の想いが通じますように」
 両手を握って目蓋を閉じ、クロスツェルさんに祈る。
 こっそりとアリア様にも。
 「ありがとうございます」
 にこっと笑って一礼してくれた。
 うん。とりあえず人質の件は忘れておきます。もう会う機会も無いでしょうし。
 「私、家に帰りますね」
 「ああ。人目は避けて行けよ」
 「はい。失礼します」
 上司殿に頭を下げて、その場を離れる。
 ……そういえば! 扉開けっぱなし!
 いやーっ! 急がなきゃ!!


 家の扉は開いてましたが、特に問題ありませんでした。盗人も出なかったみたいで何より。
 メアリ様は失踪という形でそれから何年もずっと捜索されたけど、結局見付からず。家出だ誘拐だなんだといろんな噂が立てられて、職場のほうもちょっと大変だった。
 旧教会の敷地を含めた再開発計画に関わっていたメアリ様の実家は、娘への失意から資金提供を打ち切り。計画は延長を余儀なくされたらしい。街議会の検討次第では、計画そのものが無くなる可能性も出て来たようで。運が良いのか悪いのか、生きてる間は思い出が詰まり過ぎた場所を失わずにいられそう。
 白百合はそれからもずっと教会に捧げ続けた。
 殆ど習慣化してたからなぁ。やらないと落ち着かないっていう、あれ。
 でも、一人でじゃないぞ。
 毎日じゃないけど、仕事帰りの時間が重なった日は室長も一緒に百合を捧げてくれる。その分教会の前が凄い事になってるよ。
 一度実家に帰って、室長を友人として紹介したんだ。そしたら、お父さんお母さんお兄ちゃん、皆に驚かれた。あんたに友人がいるとは思わなかった……だって。失礼な。
 でも、室長と話してる皆は、ちょっとだけ嬉しそうだった。
 だからね。お祈りの内容を少しだけ変えてみた。ほんのちょっとだけね。
 叶えて欲しくて祈るんじゃなくて、自分で叶える為に……二度と忘れない為に祈ることにしたの。
 ねぇ、
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