11部分:第十一章
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第十一章
「むしろマスコミ人というものは」
「教養はですか」
「全てがそうではないけれど」
こうした前置きはするがであった。
「あの御仁と同じ人間が多いわね」
「左様ですか」
「困ったことと言うべきかさもありなんと言うべきか」
それについてはあえて言わない沙耶香だった。
「けれどそれでもね」
「あの方にはそういうものはないというのですね」
「ないのはそれだけではないでしょうけれど」
沙耶香は鶏声に対しては何処までも侮蔑を見せるのだった。
「まあとにかくね」
「デザートですね」
「フンパーディングをね」
また彼の名前を口にしてみせたのである。
「頼むわ」
「はい、それでは」
こうして彼女のデザートが決まった。暫くしてチョコレートケーキにチョコレートのアイスクリームにチョコレートそのものを中心として作られたお菓子の家が持って来られた。沙耶香はそれを見て満足そうに笑って言うのであった。
「これがそれね」
「はい、フンパーディングです」
ウェイターも微笑んで彼女に述べた。
「如何でしょうか」
「いいデザートいうものはね」
「それは」
「見ただけでわかるものよ」
その目を細めさせての言葉である。
「それだけでね」
「ではこのデザートは」
「わかったわ」
目は細めさせたままである。既にワインは飲み終えている。デザートのその家の隣に置かれたコーヒーの香りがワインのそれに代わっている。
「それだけでね」
「では」
「それでは。食べさせてもらうわね」
「わかりました」
こうして沙耶香はそのデザートを食べはじめた。その味は彼女が言った通りであった。コーヒーも飲んでだ。そのままレストランを後にするがその時に中を見回すのも忘れなかった。そうしてそのうえで言うのであった。
「大体わかったわ」
こう言ってであった。そのまま一旦カジノに向かった。この船の中ではそうしたカジノも置かれているのである。ルーレットにカード、そうしたことに興じる者達で集まっていた。
その中に一人の若い男がいた。彼は場の賑やかな端で一人バーのカウンターにいる。そしてそこで一人カクテルを飲んでいた。
その横にはビリヤードもある。そこでも多くの者が明るい笑みを浮かべている。しかし彼はそういったものにも目もくれないのだった。
彼は一人飲み続けている。沙耶香はその若者のところにだ。あるものを投げたのである。
「!?」
「いいかしら」
それは一輪の白百合である。それを魔術で出してみせて彼の前に投げたのである。それは彼の前に静かに落ちてそこに香りを漂わせた。
花のその香りの中で沙耶香は彼の隣に来てだ。静かに問うてきたのである。
「お酒は好きではないのかしら」
「いえ、好きです」
男は項垂れたまま
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