第二十六話
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思い出せない男が携帯を取り出し動画を再生し始めた。
小さな画面の中で漆多が泣きながら全裸になっていく動画だった。
汚い顔に汚い笑いを浮かべてそいつが俺を見る。素早くもう一人が出口に回り扉を閉め、鍵をかけた。
「月人君、もう逃げられないよ。さあ漆多みたいにフルチンショータイムだよ」
蛭町が携帯を取り出し撮影モードに切り替える。どっと笑う連中。
「さっさと脱げよ。自分でやらなかったら俺たちが脱がしてやってもいいよん」
そういって一人が俺の肩を掴んだ。
「やれやれだな、お前ら。本気に糞野郎なんだな」
向こうから全面戦争を挑んできたんだから、俺は悪くないんだ。……などど自己正当化をする。
俺はつぶやくと眼帯をはずした。
内から溢れ出しそうな暴力的衝動を解放すること、……決定だ。
こいつらにかける情けは無い。
肩においたままの男の手を優しく握ってそのまま無造作に振り払う。ボキリと嫌な音を立て、男はふわり、くるりと宙を舞うとそのままロッカーに背中からたたき付けられる。蛙が潰れたような悲鳴が上がる。
続けてドアの前に立った男子学生の右耳を平手ではり倒す。俺的には軽くなでる感じでやったんだけど、どうも加減が甘かったようだ。男は重量級フォワードのタックルを食らったように立った体制のままクルクルと錐もみ状態で数メートル吹き飛んだ。倒れ込むと同時に激痛に襲われたのか耳を押さえて悲鳴を上げる。
鼓膜が破れるような衝撃は与えていないから大丈夫なはず、とは思う。でも押さえた手から血が垂れてきてるや。
「うん、どうも加減ができない感じだなあ」
のんびりとした口調で俺は反省しながら残り4人がいる方を見る。
ほんの十秒で二人がめちゃめちゃになったことで連中は恐慌状態となっているようだ。俺の左眼の色が違うことも一因か?
「驚くんじゃ無い! 糞が、4対1なんだ。月人なんかに負けるわけがない」
「おうよ! 本気でやってやる」
口々に彼らは声を上げ、ポケットから、どうやって校門のセキュリティを逃れて持ち込んだのか、ナイフを取り出した。3人が俺を囲むように立つ。蛭町はその後ろにいる。
「一斉にかかるんだ。殺すつもりで行こう! 」
と偉そうに指示をしている。
「オウヨ!! 」
「お前らがんばるみたいだけど、無駄な努力なんだよ。……でも俺は本気で頭に来てるから加減しないよ。最低でも、しばらくは病院から出られなくなる覚悟で来いよ」
なんだかワクワクしてきたよ。死なない程度にやらないといけないな。難しいけど。まあ、殺してもいいや。
話している途中で3人が一斉にナイフを振りかざしてきた。前に立った二人の内、一人が俺に向かって踏み込みながらナイフを俺の腹に向けて突き出す。もう一人は水平に撫でるように斬りつけてくる
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