7部分:第七章
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第七章
「後でまた御会いしましょう」
「後で、ですか」
「空いている時間は何時かしら」
校門で早速声をかけるのだった。
「それは何時かしら」
「一限目は」
つい正直に答えてしまった彼女だった。
「ありません」
「わかったわ。それじゃあね」
「はい」
「その一限目の時に」
既に主導権を完全に握っている彼女だった。
「その時にね」
「その時に」
「会いましょう」
亜由美に見せたあの笑みを彼女に対しても向けたのだった。
「その時にね」
「その時にですか」
「場所は」
「場所は」
「そうね。音楽教室がいいわね」
くすりと笑みを変えたうえでの今の言葉だった。
「そこがね」
「音楽教室ですか」
「後でそこで会いましょう」
ここでまた妖しい笑みに戻るのだった。
「それでいいわね」
「はい。それでは」
「楽しみに待ってるわ」
何処か虚ろになっていた彼女に対してまた告げた言葉であった。
「そこでね」
「ええ」
「さてと」
沙耶香はここまで話してそのうえで藤木真央美から顔を離してだった。学校の中に向かって足を進めながらそのうえで呟くのであった。
「後は。あの娘のクラスに行ってね。それから仕事をはじめるのは」
そんな話をしながらだった。学校の中に入る。そうしてまずは一限目がはじまるのを待つのだった。それに合わせて音楽教室に向かう。校舎の入り口の校内の地図を一瞥しただけでそこに向かうのだった。
音楽教室は鍵がかかっていた。しかし沙耶香はその扉に軽く右手を触れただけでそれを解除してしまった。そのうえで教室の中に入るのだった。
教室の中は防音設備が整っていてモーツァルトやシューベルトといった著名な作曲家達の肖像画がその防音の壁にかけられている。床は緑の絨毯であり普通の教室と比べて広いその前に黒く大きなピアノが置かれている。まさに音楽教室であった。
そのピアノの前に座ると自然にそこの覆いを開けてピアノを弾きはじめる沙耶香だった。その曲は本来オーケストラの曲だがベートーベンの田園であった。それを弾くのだった。
弾き終えるとだった。ここで扉が開いた。そうして真央美が部屋に入って来た。
彼女は校門の時とは違っておずおずとして何処か怯えた様子であった。眉も顰めさせそのうえ周囲を時折見回している。それが態度に出てしまっていた。
「ようこそ」
「あの、何故私を」
「話がしたいからよ」
ピアノの覆いを再びかけてそれを戻してそのうえで彼女に応える沙耶香だった。席を立ってそれから左手の親指と人差し指を鳴らした。すると真央美の後ろの扉から鍵が閉まる音がした。
「鍵が」
「これで安心してお話ができるわ」
真央美の方に一歩前に出たうえでまた言ってみせる沙耶香だった。
「これで
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