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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
報告
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るが、しかし――――

「で、でもシゲさん!そんな、精神感応の心意技なんて……仮に幻惑だったとしても、何か気付くはずじゃ」

必死に。

何か違う、と主張する少年に、老人はどこか憐れむような視線を向けた。

「蓮君、確かに君の実力は頭一つ飛び抜けている。そのおかげで、儂等はこうして現実世界におれる。じゃが、何事も例外はある、ということを弁えなさい」

それは、忠告でも戒めでもない。

諭し。

道理の解からない子供に、懇切丁寧に教える大人の余裕だった。

「精神感応系でも、視覚操作は比較的簡単な方じゃ。儂等よりよほど心意(あちら)の世界に浸かっておったあやつならば、習得していたとしても不思議ではない。それに、幻惑は何より相手に察知されないことが重要な要点じゃ。君が気付かなかったとしても、何もおかしなことではあるまい?」

「……………………」

「君の言いたいことはわかる。自分の強さを信ずることは心意では最重要じゃからな。だが、『それ』は油断と紙一重だということを自覚したほうがいい」

「――――ッ」

カツン、と。

煙管の雁首が老人の傍らにある灰吹きの縁に当たり、灰が落とされた。

それが何かの最終宣告だったかのように、後ろの襖が音もなく開けられ、その向こうからいかにも面倒くさそうな、そして不機嫌そうな顔をした金髪のチンピラ―――木瀬だったか―――の顔が覗いた。

「報告は聞いた。報酬はBoB本戦が終わってからでいいじゃろう。今日はゆっくり休んでいなさい」

「ッ!だけどシゲさん!」

話は、と。

その声は特別張っている訳でもないのに、なぜか身体の隅々まで轟く。

「終わりじゃ、蓮君。心配せずとも、君にチケットを渡した儂の部下も大会に潜っておる。死銃の件はこちらでカタをつけよう」

「…………わかった」

車椅子がひとりでに動き、畳の上を運動力学的に斜めに据えられている車輪が軽やかに滑り出した。

「――――蓮君」

「……何?」

「正直に言ってほしい。君の頭は今、フェイバルをかなり意識しておる。それは蓮君とあやつの間で何かがあったということの証明でもあるが、それを踏まえた上で言ってほしい。……君は今、死銃のことをどう思う?」

その問いがだだっ広い和室に響き渡り、反響し、そして掻き消える頃になっても、返答はなかった。

鹿威しの音さえ固唾を呑むように静止している中、老人の方を振り返りもせずに少年は口を開いた。

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少年の乗る黒塗りのリムジンが去るエンジン音が遠ざかっていくのを聞き、黒峰重國は静かに息を吐いた。

その吐息が何かの合図だ
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