忘却のレチタティーボ 5
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一緒に歩こう。君は自分を信じられない莫迦な迷子。俺が見ててやるから。ずっと見ててやるから。自分の足で出口を探すんだ。迷路の中だとしても、その道を歩いた事自体がいつか君に力をくれる。君自身を作り、君自身の生きる力に変わるから。歩き方を忘れたら少しだけ教えてやるから。……ステラ。
どうか、生きて。
「じゃあな」
棒立ちになった少女を神殿に置き去りにして、男性は山奥から跳び去る。
街へ戻り、髪をバッサリ切り落として関係書類を偽造し、人間の振りで書蔵館に職を持った。
入所試験で最高点を叩き出した結果与えられた特権を利用し、敢えて人が少ない部所に席を置いて適当に人事異動させる。
そうして入所試験に訪れた私をそれとなく迎え入れて……そうだ。仕事に対する姿勢を丁寧に見せて、丹念に教えてくれたのは……貴方だった。
初歩的な失敗を繰り返しても決して怒鳴ったり呆れたりせず、投げ出したりもしないで、こうあれと手本を見せ続けてくれた。
貴方が仕事に厳しかったのは、私を導く為。
私が仕事に誇りを持てるように。自分でやり遂げる事で自信を得られるように。
甘やかしたり突き離したりせず、ただじっと見守ってくれてた。
ずっと……見ててくれたんだ……。
……でもこれは……甘やかしてるのと変わらないでしょ……室長さまー……。
ん……? なんだろ……。声が出る……目も開けそ……って……
うわぁあ……きれぇー……。薄い緑色の光が、雪みたいにふわふわ降ってるー……。
ところで、今の夢に出て来たらしい白金色の絶世の美女さん……。貴女、創造神アリア様の肖像にそっくりですねー……。大人に戻ってるしー……。
「そんなに良いものではないわ」
いやいや……ふわんって笑ってると魅力数値が跳ね上がりますよー。貴女みたいな綺麗な人間になりたかったなぁ……。
「私には、貴女こそ羨ましい」
へ……? どうして……?
「私には二度と触れられないものを、貴女は持っているから」
何を見てるの……?
あ……クロスツェルさんと黒い人……? さっきの足音、あの二人だったんだ……。並んでる所を見ると、あの二人も知り合いなんだねぇ……世界は狭いや……。
「そうね。こんなに狭いのに……どうして私達は争うばかりで、手を取り合う事もできないのかしらね」
手を、取りたいの……? 世界の……? あの二人の……?
「さぁ……どうかしら? もう、私にもはっきり答えられないわ」
……あぁ……そんな寂しそうに笑ってたら、さすがにわかりますって……情報だけは耳年増なんですから私……。
「ふふ……。なら、私の想いは貴女が知っていて。私にはもう、答えを探す余裕が無いから」
良いですけど、いずれ向き合う事になると思いますよー……。ほら、石みたいに
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