忘却のレチタティーボ 5
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伸ばすべきだった。助けを求めるべきだったんだ。一人じゃ何もできないのは他の奴等も同じだって……気付けよ。莫迦。
……しょうがない奴……。其処まで神経を擦り減らしてもまだ、皆が仲良くーとかお花畑な事を祈り続けるのか。たった一人で膝を抱えて、それでなんになるんだよ。もう充分だろう? 止めてしまえ。誰もお前の願いなんて聞いたりしない。無駄なんだよ。諦めろよ。
……真性の莫迦だ。捻れて捻れて、目的も手段も見失ってやがる。それでも祈りは欠かさないとか、本当に莫迦だ。こんな莫迦は見た事が無い。
ああ……こんな下らない奴、誰も知らないだろう。下らなくて、情けなくて、寂しくて……底抜けに一生懸命な、一人ぼっちの可愛い莫迦娘。
仕方ないから、せめて俺くらいは見ててやるよ。凡人共が諦めて朽ちた道を選んだ、凡人以下の健気な愚か者。頑張れるだけ頑張れば良い。傍に居てやるから。
……友達? 悪魔憑きの兎が友達、ねぇ……。いや、良いけど。
まぁ……お前の影響なんだろうな。それも悪くない、とか思うのは……。
「解ける物ならいっそ全部解ければ良かったのに! なんなんだよ!? なんで、こんな中途半端な仕掛けにしたんだよ! 目覚めなければ何も知らずに済んだのに! 実体さえ有ればステラを救えたのに!!」
ステラ……ステラ……。
ごめん……護れなくてごめんな……。
傍に居たのに。
ずっと傍に居たのに。
何もできなかった。俺だけが助けられた筈なのに。
俺にしか助けられなかったのに……っ!
……誰かが泣いてる。見えない涙をぼろぼろと絶えず流して、ひたすら謝ってる。女性は静かにそれを見る。見えない相手を見つめて
「それでもまだ、その子を護りたいですか?」
「……どういう意味だ」
「護りたいと願うなら、貴方の封印を総て解除します。但し、私の願いも一つだけ叶えて欲しい」
女性は教会前に積まれた百合から一番新しい一輪を手に取り、香りを確かめるように白い花弁を口元に寄せる。
「お前が悪魔と契約? 何の冗談だ」
「契約が嫌なら、約束でも構いません。内容が不釣り合いと言うのなら……そうですね。一度だけ、貴方の求めに応じます。その時の私がどんな状態でも、この世界に居る限り、必ず貴方の声の元に跳んで来る仕掛けを施しましょう。その時にも私が記憶を失ったままなら、貴方の力でこの約束を思い出させて。記憶の奏者……忘却のルグレット」
「……お前の願いは、記憶を捨てたいって事か」
手に持った百合を胸に抱いて、目蓋を伏せる。薄緑色の瞳が憂いに翳った。
「私はこれから、ある場所に行って自らの記憶と体の時間を幼少の頃に戻します。でも、それだけでは足りない。私では私の力を今以上に抑えられない。無駄だと判ってはいるけれど……別人
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