忘却のレチタティーボ 5
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集団生活の知恵を得たのか、考えてみろよ。
まずはそこから見直せっての。
阿呆だな。
自分の立ち位置が解ってるなら、対処方法だって本当は解ってる筈だろ。
そんなに、人間が怖いのか。
そこまで他人が信用できないのか。
いや……。
お前が信用できないのは、お前自身か。
それもそうだろうな。
お前は誰かの結果を見るばかりで、その人間の努力を見逃し続けたんだ。
お前が誰の現実にも目を向けなかった分、誰もお前に興味を示してない。
一人きりで得られる自信なんてありはしないんだよ。
もっと早く素直に、何もできないままでも誰かに手を伸ばすべきだった。
助けを求めるべきだったんだ。
一人じゃ何もできないのは他の奴らも同じだって……気付けよ、バカ。
……しょうがない奴……。
元々細い神経をすり減らして、もうボロボロになってるっていうのに。
それでもまだ、皆が仲良くーとか、お花畑なことを祈り続けるのか。
一人で膝を抱えて、歯を食い縛って耐えて、それで何になるんだよ。
もう、充分だろう?
やめてしまえ。
誰もお前の願いなんか叶えたりしない。聞こえてないし、聞く気もない。
全部無駄なんだよ。諦めろよ。
……真性のバカだ。
ねじれてよじれて、目的も手段も見失ってやがる。
それでも祈りは欠かさないとか、本当にバカだ。
こんなバカは見たことがない。
ああ……こんなくだらない奴、誰も知らないだろう。
くだらなくて、情けなくて、寂しくて……底抜けに一生懸命な。
一人ぼっちの可愛いバカ娘。
仕方ないから、せめて俺くらいは見ててやるよ。
凡人共が諦めて朽ちた道を選んだ、凡人以下の健気な愚か者。
頑張れるだけ、頑張れば良い。
傍に居てやるから。
友達?
悪魔憑きの兎が友達、ねえ。
いや、良いけど。
まあ……、お前の影響なんだろうな。
それも悪くない、とか思うのは……。
「解ける物なら、いっそ全部が解ければ良かったのに! なんなんだよ!? どうしてこんな、中途半端な仕掛けにしたんだよ! 目覚めていなければ、何も知らずに済んだのに! 実体さえあれば、ステラを救えたのに!!」
ステラ……ステラ……。
ごめん……護れなくて、ごめんな……。
傍に居たのに。
ずっと傍に居たのに。
何もできなかった。
俺だけが助けられた筈なのに。
傍に居た俺にしか、助けられなかったのに……っ!
……男性が泣いてる。
見えない涙をぼろぼろと絶えず流して、ひたすら謝ってる。
女性は静かにそれを見る。
見えない相手を見つめながら、唇をそっと開いた。
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