暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
現実世界
第148話 彼女の刃
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らりとした動きで左右に揺れていた。

 それは男。

 スーツ姿、何処か全体的に白いのは、雪が粉雪の様に付着しているからだろう。だが、その衣服に着目したのは、一瞬。次には否応でも目に入るギラリと光る物質に目が奪われた。
 それは、ナイフだった。

 刃渡りは、目測だが30cm程はあろうかと思えるナイフ、サバイバルナイフだった。

 それを目にし、和人は唖然とする。何故、自分が斬られたのか?と。この世界では、あの世界の様に身体に赤いラインが出来るのではなく、体内に血液が滴り落ちる。電気信号の塊ではなく、生身の生きた人間である証だと言える鮮血。熱い痛みと共に、ぽた、ぽた、と雪が数mm積もったアスファルトの上に滴り落ちる。白の世界に、赤い斑点が彩られた。
 その時だ。

「遅い、遅いよ、キリト君。僕が風邪ひいちゃったらどうするんだよ」

 それは殆ど囁きに近い声量。だが、粘り気とも言える様なものがあるその声。……忘れる筈もない声だ。

「す……須郷」

 和人は、呆然とし、その名前を呼ぶと同時に、和人の声に応える様に一歩踏み出してきた。丁度、ナトリウム灯の放つ光が、男の顔を照らした。

 それは、忘れたくても、忘れられない顔。

 憎しみを全て、剣に込め、何度その首を、その顔を斬ってやりたい、と思ったか判らない。負の感情だが、誰かを思うと言う観点からでは、この男も負けていなかった。

 だが、その顔は何処かおかしい。異様な表情。なぜ、そう感じるのかは よくわかった。あの視線が異様なのだ。目は見開き……、そして左の瞳はまるで、瞳孔が細かく震えている様。
 だが、片方の目 右目は小さく収縮したままだ。

 ここで、和人は理解出来た。
 あの異様な目は、その場所は 世界樹の上で自分自身が貫いた場所だったからだ。

「……随分と酷い事するよねぇ? キリト君」

 軋る声でそう言う須郷。ゆっくりとした動作で目元に手を当てた。

「まだ、痛覚が消えないんだよ。……まぁ、いい薬が色々とあるから、構わないけどさ」

 そう言うと、スーツのポケットから、カプセル状の薬らしき物を口に放り込んだ。即効性を求めたのか、噛み砕き、中の薬剤を咀嚼していた。和人は、漸く突然斬られたと言う事実から来る衝撃と、物理的な衝撃から回復し。

「――須郷。お前はもう終わりだ。あんな大きすぎる仕掛けを誤魔化し切れるものか。大人しく法の裁きを受けろ」

 乾いた唇をどうにか動かしながら、和人はそう言った。だが、須郷はまるで気にしていない素振りを見せ。

「終わり? 何が? 何も終わったりしないさ。……まぁ、レクトはもう使えないけどね。僕はアメリカに行くよ。僕のこれまでの研究資料、僕自身の能力。……僕を欲しいっていう企業は山の
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