精神の奥底
47 ブリキの心臓
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ング...まさか』
「シンクロナイザーが姿を消していた約7日の空白の間に“彼ら”と接触していた可能性が」
『...ご苦労』
その一言でキングは電話を切った。
“彼ら”とはキングさえもできることなら、相手にしたくない集団のことだった。
ハートレスの感性からしても正気の沙汰ではない集団であり、ディーラーの科学力を持ってしても理解不能な手段を駆使して暗躍している。
視覚や聴覚への、言葉や書物による簡単な説法のようなものだけで洗脳し、その人間の能力や体質を大きく変えてしまうといった具合だ。
この手の洗脳としては独裁国家で法令や教育、その政治体制により国民の認識を操作するものが使われてはいる。
しかしその枠に既に収まっている人間に対して、何かを施し、人間の体質まで変え、その技術を自在に操るということは、もはやオカルトの域に達していると言っていい。
彩斗がそんな連中と出会っていないことを祈りつつ、再びデータを見なおした。
「これだけの脳内麻薬が分泌されていたなら、痛みが感じなかったのも頷ける...」
脳内麻薬は体内で生成されるものでありながら、違法薬物すらも遥かに凌ぐ効果を持つ。
特にエンドルフィンに至っては、モルヒネの6倍から7倍近い鎮痛効果をもたらし、彩斗のこの分泌量ではもはや痛みなど感じているはずもない。
それと同時にもたらされる多幸感や自信が、本来の彩斗に備わった身体能力や明晰な頭脳を動かす。
これこそが、武装した傭兵の大群を相手に、文字通り『怯むこと無く』戦い続けた冷血な電波人間、スターダスト・ロックマンを形作っていたのだった。
トラッシュとの融合で掛かる多大な負荷も、常軌を逸した鎮痛効果と治癒能力により乗り越えることに成功した。
それにより、晴れてスターダストシステムが望む理想の肉体へと作り変えられ、次の戦闘では脳内麻薬にも頼ること無く、これまでの能力を遥かに超えた力を発揮するだろう。
「......どれか1つでも致命傷なのに」
ハートレスはモニター上のデータを整理して呟いた。
彩斗を今、生かしている「W.O.A.」には副作用は無い。
しかし薬物である以上、多用するのは決して身体にいいことではない。
何かしらの形で反動が返って来かねない上、原因である心臓には負担が掛かっている。
それに強い依存性を持つ脳内麻薬が加われば、身体の異常を使える痛みが機能しなくなるために、自分の限界が見えなくなってしまう。
身体がボロボロになるのは予想に難くない。
寿命はますます削られていく。
データを見る限り幸いなことに、彩斗は薬物依存等にはある程度の耐性があるのか、現実にも自らの肉体への自虐行為など脳内麻薬の分泌を加速させるような依存症状を示していない。
だが安心はしていられない。
スターダストという今ま
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