23部分:第二十三章
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第二十三章
「明日で終わりね」
「はい、そうですね」
沙耶香のその言葉にこくりと頷く亜由美だった。彼女は夢の中でも働いている時と同じ様に生真面目なスーツに膝までのスカートである。それに対して沙耶香もまたいつもと同じ格好である。その黒いスーツとズボンにコート、赤いネクタイと白いシャツである。
「明日が終われば忍は」
「後は魔に襲われることはないわ」
このことを彼女に告げるのだった。
「あと一日よ。安心して」
「はい。ところで」
「何かしら」
「どうしてこの中に」
亜由美はいぶかしむものと怖れるものを半々に混ぜた声で問うた。
「ここは私の夢の中ですよね」
「そうよ。現実の世界ではない証に」
ふと周りに目をやってみせる。亜由美にも促す目であった。
「この世界には立つ場所がないわね」
「はい」
薄紫の霧がかかったような現実離れした色が一面に広がっているだけである。二人はその中に立っていた。だが浮かんでいるという感触もない。現実には味わえない感触である。
「ですね。ここは」
「夢の中よ」
また言う沙耶香だった。
「貴女のね」
「忍は」
「私が守っているわ」
その問いにはすぐにこう答えた。
「正確に言えば私達がね」
「私達?」
「こういうことよ」
その問いにいぶかしんだ亜由美に対して後ろから答えた。だが沙耶香は前にいたままだ。だがそれでも声は後ろからしてきたのである。
「私はね」
「あっ・・・・・・」
後ろからその沙耶香が出て来たのである。亜由美の後ろから。もう一人の彼女がである。
「貴女がもう一人」
「私は身体を分けることができるのよ」
このことも語ってみせた。
「だからなのよ」
「そうだったのですか。それで」
「そうよ。わかってくれたわね」
「はい。では忍は」
「私が守っているわ」
そしてまた言うのであった。
「それは安心してくれていいわ」
「わかりました」
「そして」
沙耶香は忍の安全のことを話してからさらに言葉を続けてきた。
「また言っておくことがあるわ」
「今度は一体何を」
「明日で終わると言ったわわね」
「そのことですか」
「相手はわかったわ」
次に言うのはこのことだった。
「既にね」
「わかっているのですか」
「だから安心して」
二人の沙耶香がここで微笑んでみせた。亜由美の前後から。
「明日で全て終わるわ」
「そうなのですね」
「相手がわかれば造作もないこと」
こう言ってまた微笑む沙耶香だった。
「本当に何でもね」
「ではその言葉信じさせてもらいます」
亜由美も彼女のその言葉を受けた。前後から話してくるその重なり合った言葉をである。
「それで」
「御願いするわ。それでね」
「はい」
「後はだ
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