忘却のレチタティーボ 4
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げたいのに、がっしり抱えられて動けない。嫌だ!
「俺の、記憶を 君、に……」
唇に軽く触れるだけの、生臭い、血の口付け。
「……っ!?」
頭を占めていた映像が切り替わる。私を虐げる男達が姿を消した。体中を苛む感覚も消えて、男と一緒に地面へ膝を落とす。
これは……この教会がまだ現役として使用されてた頃? 数人の信徒が出入りするのを、屋根から見下ろしてる。誰かの視点なの? ぼんやりとゆっくり街並みを巡る視界。
「お父さんは機嫌が悪いとお母さんを叩くの。お母さんはいつも泣いてる」
突然響いた子供の声で視界が暗転した。
暗闇は白い閃光に呑まれ、使われなくなった教会の前。座る女の子を見上げた映像に変わる。
え……これ、私? 小さい頃の私を見てる?
「でもね。良い事があると、お父さんもお母さんも笑うんだよ。お兄ちゃんが良い成績を取ったら、三人して笑うの。私、笑ってる三人が好き。仲良くしてる三人が好き。私もお兄ちゃんみたく良い事したら、もっと長く笑っててくれるかなぁ」
映像がまた切り替わる。今度は雨の中で泣いてる私。
「何をしても笑ってくれないの。私じゃ駄目なのかな? 私じゃ、お母さんやお父さんを喜ばせられないのかな。笑って欲しいのに怒らせてばっかりなの……なんでこうなのかなぁ。お兄ちゃんみたいになれれば良いのに。なにか一つでも凄いねって誰かに言われれば、お父さんもお母さんも喜んでくれると思ったのに。なんにもできないの。なんで私はこんなんなのかなぁ……」
こんなの……覚えてない。
これが、私を襲った男の記憶?
「あーもう! どうせ私は役立たずですよ!」
また切り替わった。これはさっきと比べて最近の私。
そうか。過去から未来に進んでるんだ。
「なんの取り柄も無くてすみませんね! どうせお兄ちゃんの足下にも及びませんよ。屑ですよ屑。あー、神様の贔屓がにくーい!」
「ふ。そんな事を言っても、願いは変わってないクセに」
え。これ、室長の声?
「ふぅ。ごめんね。また愚痴ってしまった。うんざりするよね」
私が私を撫でる。いや、視界の主を撫でてる。
「愚痴くらいは聴いてやるさ。いつまでも此処に通うのはお前くらいだからな。退屈を紛らわすのに丁度良い」
「むぎゅーさせて、むぎゅー」
視界がふわっと浮上する。
「……まぁ、良いけどな。どうせ借り物の器なんだし」
……もしかして、これって……。
また映像が切り替わる。
「いやああっ!!」
私が男達に襲われてる。それを必死に止めようと、視界が何度も何度も男達に体当たりする。
「離せ! その子に触るな!! ステラを傷付けるな!!」
「ああ? なんだこの兎。うぜぇ!」
短剣が光った。視界が真っ赤に染まる。私の声が一瞬、息
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