忘却のレチタティーボ 4
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た、可哀想な女」
メアリ様に正面から抱きしめられてる体は、実際はぴくりとも動かない。
手足も指先も、目蓋や視線でさえ、自分ではまったく動かせない。
メアリ様以外の誰も、私の体には触ってないのに。
現実と同じ景色の中、現実には居ない男の人が小さい頃の私に触るたび、誰にも触られてない筈の私の体が痛みを訴える。
男の人が、小さい頃の私の首や胸を舐め回したり掴み上げたりするたび。
現実の私の首や胸にも何かが這い回り、揉みしだかれてる感触がする。
沸き上がる焦燥と悪寒と嫌悪感と激痛が、動けない体と頭を苛んでいく。
やめて……っ
嫌! イヤだ!!
「ああ……。やっぱり、貴女の叫びは極上の味がしますわ。可愛いステラ」
掴まれてる腕が痛い。足首が痛い。背中が痛い。
無理矢理開かれた両脚の間に、何かが迫る。気持ち悪い。怖い。イヤだ。
やめて、入って来ないで!
助けて……っ
誰か、助けてぇええ……っ!!
「!? 鈴?」
「ステラ!」
……っあ、……ぁ……室、長?
室長が……教会と私の間に、室長が舞い降りてきた。
どこから、飛んできたの?
鈴の音がする。
朝、室長がくれた小さな袋が、胸ポケットの中で白く光ってる。
「ステラを離せ!」
「……ああ、御守りを付けておいたのね。血相を変えて跳んでくるなんて、悪魔らしくもない。貴方と同じ場所に封じられていたなんて、恥ですわ」
……室……長……
ごめん なさ……っ 外に、出ないって……
いっ…… ゃあ いやぁあ……っ……!!
「ステラ!!」
「可哀想なステラ。醜い男達の欲望に身も心も引き裂かれて辛いでしょう。解放してあげますわ。さあ、しっかりとよく見て。今目の前に現れた男は、少女だった貴女を汚し、今もなお、蝕み続ける敵。この剣で、殺しなさい」
……違、ぅ……
室長、は……
そん なの いら な……っ
「室長? あんなにも醜い男が、貴女が知っている美しい容姿の男なの?」
頭の中、小さい頃の私を組み敷く男の人の顔が、目の前に、歪んで……
……違 う
あれ は、室……長……
室、長……、逃げ……て……っ
「耳を貸すな、ステラ! 取り込まれるぞ!」
「ほら、ステラ。よぉく思い出して。あの男は、貴女を助けようとしていた白いうさぎを殺した、憎い仇でしょう?」
し ろ……
…………ス イ……?
……スイ……、死ん だ……?
「そうよ、ステラ。あの男が短剣で斬ったの。貴女の大切な大切な友達を」
スイ……
頭の……中
……片隅で 赤く なっ……
…………私の 友達、を 殺した……?
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