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ソードアート・オンライン〜Another story〜
ALO編
第143話 闇との邂逅・開かれた記憶
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《無》と言っていい空間だった。
「う……ぐ……」
リュウキは、必死に顔を起こし、《サニー?》がいた場所を見た。そこには、誰もおらず……無の空間が広がっている。そして、その直後、まるで無が開く様に光の筋が縦に入ったかと思うと……扉が開く様に左右に分かれた。
「……どうだ、見事なものだろう?」
その光の中から、誰かが出てきたのだ。声も、聞こえてきた。
そこは、本能的に光だとは形容したくなかった。
「あの時の彼女の姿だ。寸分たがわずに再現したつもりだ。……今のお前を見てると、まさに効果覿面だったと判るな」
リュウキは、その声は、忘れる筈もない。
10年程だった筈なのに、まるで寄生虫の様に、脳の端に残っていたモノが鮮明に思い浮かんだ。悪夢の様に。
「ここまで……長かったな。漸くオレも先に進めるな。くくく、あの時から時が止まったままだ」
含み笑いをしながらそう言う男。下半身部分までしか、まだ見えていないが、黒の衣を纏っていると言う事は判る。黒が連想するものは、キリトの様に良いものばかりじゃない。
暗黒、黒幕。……そしてイメージから、『悪』『死』『恐怖』『災禍』と意味を付与される例も多い。
圧倒的に後者なのが、この男だった。
「お、お前……は……!」
麻痺で動けない身体を必死に起こし、顔を見ようと藻掻くリュウキ。そして、そんなリュウキに態々視線を合わせる様に屈むと。
「久しぶりだな。……隼人君。キミに会いたかったよ」
心底嫌悪する笑顔を向けてくる男。あらゆる悪意を向けられているかの様な顔だった。
「狭、山……っ!」
ギリッ……と歯を食いしばらせながら、睨みつける。あの時と何ら変わっていない。この世界、ALOの世界だと言うのに、アバターは現実のそれを忠実に再現していた。
……サニーの様に。
《狭山》
もう判るかと思われるが、この《狭山》と言う男こそ、リュウキが嘗て所属していた《能力開発研究所》の場所の所長。例の事件が明るみに出る前までは、個々の能力が高い人材を育成・輩出してきたと言う事もあり、企業にはそれなりに名も通っていた。
それは、裏表問わずだった。
その優秀な技術者を使い、違法な行為にも手を染めていた。裏の方が入る金額も桁が違う。だから、のめり込んでいったのだ。リュウキが止めるその時まで。
「……おいおい、オレの事を覚えてるんだろ?オレはあの場所の長であり、そして人生の先輩、大先輩だ」
醜悪な笑顔だったそれが途端に、崩れ、憤怒の塊となってリュウキを射抜く。立ち上がり、力を込めて思い切りリュウキの腹部へと蹴りを叩き込んだ。
どすんっ!!
「ぁぐっ!!」
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