暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
ALO編
第143話 闇との邂逅・開かれた記憶
[8/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話



《無》と言っていい空間だった。




「う……ぐ……」

 リュウキは、必死に顔を起こし、《サニー?》がいた場所を見た。そこには、誰もおらず……無の空間が広がっている。そして、その直後、まるで無が開く様に光の筋が縦に入ったかと思うと……扉が開く様に左右に分かれた。

「……どうだ、見事なものだろう?」

 その光の中から、誰かが出てきたのだ。声も、聞こえてきた。
 そこは、本能的に光だとは形容したくなかった。

「あの時の彼女の姿だ。寸分たがわずに再現したつもりだ。……今のお前を見てると、まさに効果覿面だったと判るな」

 リュウキは、その声は、忘れる筈もない。
 10年程だった筈なのに、まるで寄生虫の様に、脳の端に残っていたモノが鮮明に思い浮かんだ。悪夢の様に。

「ここまで……長かったな。漸くオレも先に進めるな。くくく、あの時から時が止まったままだ」

 含み笑いをしながらそう言う男。下半身部分までしか、まだ見えていないが、黒の衣を纏っていると言う事は判る。黒が連想するものは、キリトの様に良いものばかりじゃない。

 暗黒、黒幕。……そしてイメージから、『悪』『死』『恐怖』『災禍』と意味を付与される例も多い。

 圧倒的に後者なのが、この男だった。


「お、お前……は……!」

 麻痺で動けない身体を必死に起こし、顔を見ようと藻掻くリュウキ。そして、そんなリュウキに態々視線を合わせる様に屈むと。

「久しぶりだな。……隼人君。キミに会いたかったよ」

 心底嫌悪する笑顔を向けてくる男。あらゆる悪意を向けられているかの様な顔だった。

「狭、山……っ!」

 ギリッ……と歯を食いしばらせながら、睨みつける。あの時と何ら変わっていない。この世界、ALOの世界だと言うのに、アバターは現実のそれを忠実に再現していた。
 ……サニーの様に。


《狭山》


 もう判るかと思われるが、この《狭山》と言う男こそ、リュウキが嘗て所属していた《能力開発研究所》の場所の所長。例の事件が明るみに出る前までは、個々の能力が高い人材を育成・輩出してきたと言う事もあり、企業にはそれなりに名も通っていた。

 それは、裏表問わずだった。

 その優秀な技術者を使い、違法な行為にも手を染めていた。裏の方が入る金額も桁が違う。だから、のめり込んでいったのだ。リュウキが止めるその時まで。


「……おいおい、オレの事を覚えてるんだろ?オレはあの場所の長であり、そして人生の先輩、大先輩だ」

 醜悪な笑顔だったそれが途端に、崩れ、憤怒の塊となってリュウキを射抜く。立ち上がり、力を込めて思い切りリュウキの腹部へと蹴りを叩き込んだ。

どすんっ!!
「ぁぐっ!!」
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ