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黒魔術師松本沙耶香 天使篇
13部分:第十三章
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第十三章

「貴方の考えではないわね」
「何っ!?」
「貴方は大したことのない存在よ」
 その異形の者を見ての言葉である。
「小者ね。ほんのね」
「俺を愚弄するというのか」
「愚弄ではないわ。真実を言っただけよ」
 ここでは沙耶香の方が上手であった。全てにおいてだ。
「ただ真実をね」
「真実だというのか」
「後ろにいるわね」
 そしてこうも言うのだった。
「そうね。いるわね」
「答えるつもりはない」
 これこそがであった。肯定の言葉に他ならなかった。
「それはだ」
「そう。ではお話は終わりね」
「魂をもらう」
 忍を見据えての言葉である。
「いいな、それで」
「残念だけれどそれはできないわよ」
「貴様がいるからだというのだな」
「何度も言うけれど私は今はこの娘の守護天使なのよ」
「だからか」
「ええ、そうよ」
 まさにそれなのであった。
「貴方はここで死ぬことになるのよ」
「そう言うか」
「さあ、死になさい」
 その言葉と共にであった。紅い稲妻の鞭を左手に出して一閃させる。異形の者はそれは避けたのであった。
 しかしであった。鞭は上に跳んだ彼を追いであった。その彼を貫いて消し去ったのであった。
「さて」
 彼を消したうえでまた言う沙耶香であった。
「まずはこれでよしね」
 今はそれでいいというのであった。そうしてそのうえで。これからのことに考えを及ばせる。忍はその彼女に気付くことなくそのクラスメイトと共にバレーボールを楽しんでいた。クラスメイトも今はごく普通の明るい女の子の顔になっているのであった。
 沙耶香は常に忍といるのだった。彼女が気付かずとも。それは夜も同じでこの日の夜も。自分の部屋で眠っている彼女に迫る複数の影にすぐに黒い羽根を手裏剣の様にして投げてそれで討ったのであった。
 次の日は放課後であった。忍が通学路の公園の前を通った時にだ。不意にレーサーの一団が公園の中から出ようとしたのであった。
 ここでもであった。沙耶香は出た。そのうえでそのレーサー達の後ろにいる者達に対して告げたのであった。
「今度は数で、というのね」
「貴様は」
「何者だ?」
「天使なのか?」
 見ればそれぞれ羊や牛や馬やそういった顔を持った者達だった。蝙蝠の翼もありその姿は日本の妖怪や鬼よりも西洋の悪魔を思わせるものであった。
「いや、違うな」
「むしろだ」
「我々に近いか」
「生憎だけれど」
 その彼等に微笑んだうえで述べる沙耶香であった。
「私は人間よ」
「人だというのか」
「その娘に憑いていて」
「憑いてはいないわ」
 微笑をそのままにそれは否定するのだった。
「そうではないわ」
「では何だというのだ」
「それではだ」
「守護しているのよ」
 ここでも
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