暁 〜小説投稿サイト〜
珠瀬鎮守府
響ノ章
伝えられた言葉
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だな」
 青葉が僅かに体を揺らした。今度の驚きは彼女の番だった。
「それは違う。事情聴取を受けていたのは私だ。いいか、よく聞け。柏木提督は珠瀬海戦中に、敵戦艦と地上戦になり死亡した」
 驚きが艦娘の間を伝播する。一切の反応を返さぬ者が、この事情を知る者。
「柏木提督は戦艦を撃破するものの重症を負い、その場で死亡した。私は彼から諸君への伝言を預かっている」
 私は、意識を空に向けた。太陽が照る今日この日、空は湿度が高く、空気遠近法もあり薄い青だった。
「ありがとう、と。今際の際彼はそう言った」
 その言葉を聞いて、泣き出す者もいた。だが、私はその言葉を受け入れられなかった。結局、私達は艦娘ではない人間を唯一の戦死者にし、港に被害を出しただけだったのだから。
「伝言はそれだけだ。諸君らは今寮を追い出され不便を強いられているだろうが我慢してほしい。話は以上だ。最上、第二艦隊、第四艦隊はその場に残れ。その他は解散だ。各自自由にしていいぞ」
 暫くして残されたものと、提督、鳳翔さんだけになった時、提督は口を開いた。
「昨日、不知火に聞いたところ第二艦隊は丙艦隊に姫が居ることを認知していたらしいな?」
「はい」
 第二艦隊を代表して私が応える。本当は天龍がすべきなのかもしれないが、柏木提督からこの艦隊を、半ば任せる形になっていたせいもあり私が応えた。
「姫の存在を口外禁止とする。丙艦隊の旗艦は戦艦だった事にしろ。以上だ。響以外は解散しろ」
 そうして、私以外の第二艦隊が消えてから、また提督は口を開いた。
「最上、先日の戦闘の指揮、ご苦労だった。艦娘に死者が出ていないのはお前の優れた指揮によるところが大きい。響と共に、何らかの勲章及び礼が送られるだろう」
「要らない!」
 最上が、吠えた。後ほんの少し遅ければ、私がその言葉を発しただろうに。
「柏木提督は戦死して、湾内設備も破壊された……何が優れた指揮ですか! 何一つとして目標は成されなかった!」
「それは、本気で言っているのか? だとするならば、お前達にあの伝言を伝えるのは早かったのかもしれないな」
「何を」
「良いか最上、戦艦は確かに柏木を重体にまで追い込んだ。だが、とどめをさしたのは私だ」
「なっ」
 絶句する最上。噂話とは逆の真実。青葉は辿り着いていたのかもしれない答えを、最上は知らなかったのか。
「内蔵の損害、出血量、損失体積、どれも全てが致死的だった。殺すしかなかった。あのまま出血死させるよりかは安らかに眠らせてやるしかなかった。腹部の怪我は想像しがたい程の激痛を得んだろう。現に私に介錯を願う程だった。それでも、そんな状態でもお前たちに言葉を残したのだ。響、お前も見ていたのだろう?」
 警備隊に移動させられたが、白木提督は気づいていたのか。
「最期、どうだった
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ