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珠瀬鎮守府
響ノ章
伝えられた言葉
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いた伊勢と最上、そして応援の白木中佐がその事を知っていたんです。回収は、元々十分な兵力のあった第四艦隊に柏木提督が予め言っていたことでした。もう全てが手遅れとなった第四艦隊は亡き柏木提督の言葉に従い一艦だけ回収したんです」
「だから、木曾は行方不明と」
「そうです。敵を抱えてましたしね、色々事情聴取ってところですか。それに、結構怪我しているみたいで入院しているみたいです。けど命に別条はないと言っていました。正真正銘、この海戦で戦死したのは柏木提督ただ一人です」
「そう……」
 ゆっくりと息を吐く。青葉は、知らない。私達が見つけたのはただの深海棲鬼ではない。姫だった。恐らくこれが本当の極秘事項。不知火が口止めされていないのは、本部は不知火達が姫の存在に気付かなかったと思ったからか。
 それにしても、驚くべきは木曾だ。姫を大破まで持ち込むとは、並大抵のことではない。
「調べて他の娘に話す内に尾っぽがついていって、最上から釘を刺されたのでそれを直すことも今やできないんです。本当に死んだのは提督、そんな単純で、大切なことを、皆知りません。白木中佐が戻ってくれば全て明かされるでしょうけど」
 青葉は目を細めた。思えば、私がこの鎮守府に来てから初めての死者だった。青葉が艦娘となったのがいつかはわからないが、もしかしたら、初めての見知った顔の戦死者だったのかもしれない。
 私は青葉に礼を言って、天幕へと戻った。柏木提督からの伝言を伝える役目は、私ではない。


 翌日、艦娘全員が赤煉瓦前に整列していた。その中には先の海戦前の集合時には居なかった第四艦隊の姿もある。ただ同時に、あの日居た何人かは姿がなかった。木曾もその内の一人だ。
 集まった艦娘達は中々用事が始まらないこともあってか、小声で会話する者もいた。提督が内地へと向かい、そろそろ帰ってきてもいい時期、そんな言葉がどこからか聞こえた。青葉を伺えば、その言葉が聞こえたのか、平素を装ってはいるが少し顔が歪んだのに私は気づいた。
「傾注」
 鳳翔さんのによって、全員が正面を向く。正面の赤煉瓦が出てきた人物は、白い制服に身を包んだ男性。柏木提督より幾分か若く、そうして改めて見れば、それとなく似ている顔だった。白木中佐に違いないだろう。
「諸君、本日より珠瀬鎮守府の全指揮を執る事になる大佐、白木だ。宜しく願う」
 何人かの艦娘が、驚き故に体を揺らす。其れを見て、僅かに笑った後に新たなる提督、白木提督は言葉をかける。
「何か言いたいことがあるのか?」
 言葉の割に言い方は柔らかい。故に、言葉をかけられた駆逐艦は臆すること無く質問を放った。
「柏木提督は今はどうしているんですか?」
「尤もな質問だ。事前に聞いた内では、この鎮守府内では提督は内地で事情聴取を受けている、そんな噂が流れているよう
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