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珠瀬鎮守府
響ノ章
伝えられた言葉
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。強い日差しが照る。湿度の高い風に夏の気配を感じながら、私は不知火が指した方向の天幕へ移動した。何箇所かの天幕に場所を尋ねながら、私はとうとう青葉が使っている天幕に辿り着いた。
「青葉、居る?」
「いますよー。どなたです?」
「響。ちょっと話がしたいんだけど」
「いいですよ。天幕の中ではなく、別の場所で話しませんか」
 その言葉に了承し、出てきた青葉の後に続く。青葉は鎮守府内の施設に入ると、迷いなく空き部屋まで私を誘導した。
「青葉、此処で噂話が飛び交っているようなんだけれども」
「噂話、ですか。それは青葉も把握しています。けれど先に言っておきます。あれは、青葉も本望ではありません」
「と、言うと」
「元々、青葉は今回の珠瀬海戦に関する独自調査をしていたんです」
「珠瀬海戦?」
「ええ。深海棲鬼に強襲され港が破壊され、地上員の死者すら出した海戦。ですが詳細は殆ど秘匿されています」
「何故調査を?」
「許せますか、貴方は」
 この熱い部屋の中、その言葉は私の背中を別の理由で汗をかかせるのに十分な迫力があった。
「命を賭して戦ったその戦闘の殆どが隠匿されているんです。私達は何と戦い、何を守り何を犠牲にしたかすら曖昧なのです。死者が出ているのにも関わらず」
 犠牲。それは、柏木提督だけではない。入院している間、それを見た。ある軽巡洋艦の娘だった。その足は、膝から先が片方なかった。
「許せなかった。だからこそ調べた。調べあげた」
「何処まで辿り着いたの?」
「響ちゃんは、何処まで知っているの?」
 穏やかな顔を受けべてはいるが、その目は真剣に何かを探っているかのようだった。私はそれに、無言で返す。
「あの時、響ちゃんは第二艦隊として丙艦隊に向かった。けど、その後は鎮守府内で見つかった。そりゃ、全部知っているよね」
 何処まで調べあげたのだろうか、この人は。
「なら、何にも隠さなくていいよね。青葉はね、調べたんだよ。そうして事実に手が届きそうだった時に、釘を刺されました。青葉の艦隊長、最上に」
 最上。指揮所が攻撃された後、警備隊は最上が指揮を執っていると言っていた。確かに事の顛末を知っていたとしても不思議はない。
「その代わり、色々な事を教えてもらいました。あの日、木曾が深海棲鬼を回収した事。そして、提督が死んだこと」
「木曾が、深海棲鬼を回収した?」
「あれ、知りませんでした? けど言っちゃったからには話しますよ。木曾は丙艦隊と戦闘中、旗艦を大破しました。その時に第四艦隊が到着、他の丙艦隊を撃滅し、大破状態の旗艦と木曾を回収し、戻ってきたんです」
「何故、そんな余裕が」
「全てが同時だったんです。提督が死んだのも、鎮守府正面で敵を倒しきったのも、回収したのも。第四艦隊の艦載機を中継して何とか情報を伝達出来て
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