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逆さの砂時計
忘却のレチタティーボ 3
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 今更だけど、この書蔵館東方支部って、規模がかなり大きいのよね。

 庭園や倉庫を含めた敷地は街の四分の一を占めてるし。
 その敷地の大部分を埋めてる本館は、純白の外壁に無数のガラス窓とか、神話の世界を再現した彫刻とかを飾っていて、まるで白亜の宮殿みたい。
 人型の彫刻の大半が本を持ってるのは、目印とか看板代わりなのかなあ?
 公共施設ではあるんだけど、外門にも街にも案内掲示板とか全然無いし。
 もしそうだとしたら、すんごい贅沢な看板だよね。
 お金の注ぎ込み方が尋常じゃない。

 本館の内部は二層構造で、真ん中辺りが円状に高く吹き貫けてる。
 二階には壁と一体化した書棚、手すり付きの廊下、伸縮可能で持ち運びも便利なはしご、丈脚が長い床置き型の燭台くらいしかない。
 光源はその燭台と、なんと、主にガラス天井だ。

 いやー。最初の頃は、割れたら怖い……割れたら怖い……と思いながら、びくびく仕事してたよ。
 万が一天井が落ちてきたら、真下にある読書空間は言葉にできないほどの大惨事に!

 ぅああ、今でも考えるだけでゾクゾクするうーっ。
 スリルとかじゃないよ!
 絶対ホラーだよ!

 凄いよね、近代建築。
 考えた人も作った人も、肝の座り方が常軌を斜め遥か上に逸脱してる。
 本当、あんな大きなガラス、どうやって作って運んではめ込んだんだろ?
 どこかで何かの計算が、ほんのちょび〜っと狂っただけで、自分も他人も天に召されちゃうような、ああいう仕事にだけは、仮に携われたとしても、絶対に携わりたくないと思う。
 いろんな意味で怖すぎるもん。
 その分、無事にやり遂げちゃった人達には、尊敬しかないわ!

 一階は、総合入り口の右手方向に受付があって。
 正面から左手方向には、主に読書用の机と椅子、手持ちも可能な卓上型の燭台と、柱や壁の間を埋めるように無数の本棚がズラリと整列。
 受付の後ろに回ると複合事務所が設置されていて、事務所内はお客様から見えないようになってる。

 その事務所の奥にある扉から狭い廊下へ出て、まっすぐに進んでいくと。
 私が勤めてる管理室への扉を右目に、正面は突き当たりの壁。
 この壁を壊せば倉庫に出るけど。
 普通に、管理室内の左側にある両開きの扉から、倉庫内へ突入できます。

 管理室への扉を開いて正面から見ると、まず私の椅子と机が、扉に対して背中を向ける形で置いてあるでしょ?
 で、問題があるのは、その奥。
 私の机の正面、人間の大人を一人挟んだくらいの距離に、廊下へと繋がる扉をガン見する室長の机と椅子があります。

 そう。
 恐ろしいことに、管理室に居る間は基本、室長と私で睨めっこ状態!
 何の罰なのか!
 まあ、室長は大体、足先を倉庫側に向けて天井を
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