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逆さの砂時計
忘却のレチタティーボ 3
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んだ!」
 痛い! 腕痛いってば! 引っ張らなくたって行きますよ、もう休みって決めたんだから。
 だけど、貴方までが職場を離れたら他部所に迷惑でしょうが! 仕事人間の癖に…… 
 …………?
 「……離してください。痛いです」
 私、頭に血が上って忘れてた。上司殿は仕事人間じゃないか。仕事に対してはとことん厳しい人だ。
そんな人が部下に無駄な休暇を与える筈が無い。理由は説明しないんじゃなくて、したくてもできないんじゃないの?
 邪魔とかじゃなくて、言いたくても言えないから「頼む」って……。
 「……すまない」
 ほら。ちゃんと向き合う姿勢を見せれば態度を軟化させてくれるじゃない。離そうとはしないけど、力で無理矢理引き摺るのは止めてくれた。
 「……説明はもういいですから。荷物、持ってくださいね。とにかく量が必要なんですから」
 足を止めて振り返った上司殿から、困ったような嬉しいような……素敵な笑顔の洗礼を受けました。
 やめて。
 放射熱で溶けるから、本当やめてください。
 「ありがとう」
 「感謝される事なんですか?」
 「……どうかな」
 「根拠がはっきりしてないと、反応に困りますねぇ」
 仕事に関係してるとは思えないけど、まぁなんだ。必要な休暇なんだな、きっと。うん。そう思うしかない。
 「あ、教会には寄らせてくださいね。一週間分置いて来なきゃ」
 「ああ、勿論」
 しかし、一週間か……長いなぁ。
 どうやって過ごそう?


 一旦家に帰って仕事用の荷物を置き、買い物用の手提げ袋を持って商店街に出た。露店が開くには早い時刻だけど、店舗型はちらほらと開き始めてる。
 一週間ともなると、干し物系食材が重要になってくるかな。傷みやすい葉物野菜は、買っても良いけど一日二日で使い切らなきゃ。後半は必然、肉が主になっちゃうわぁ……なんて思いながら買い物を進めていたら、室長がいきなり小さな白い紙袋をポイッと投げ渡してきた。
 「やる。家で開けろ」
 「? あ、ありがとうございます?」
 なんだろ? 休暇手当ての一種? 持った感じ軽いし、微かにコロコロと音がする。鈴か何かかな。
 とりあえず、服のポケットに入れとこう。
 「……それで終わりか?」
 「あ、はい。これだけあれば多分」
 食材や生活用品を袋いっぱいに詰めて、よいしょと肩に担いだら、ひょいっと奪い取られた。
 「や、自分で持ちますよ?」
 「荷物持ちに来たんだ。俺が持つ」
 むむー……それはなんか申し訳ない気がするぞ?
 でも、持ってくれるって言うんだから、上司殿の顔を立てる意味も込めて厚意に甘えるべきなのか?
 でも、あれ全部私のだし……むーんん……。
 いいや。投げた。
 「ありがとうございます」
 改めてお礼だけは言って
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