忘却のレチタティーボ 2
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これまで、仕事以外じゃこんな風に絡んできたりしなかったのに。
「しばらく管理室を空ける。留守は任せた」
「了解しました」
上司殿は、書類を持って再び外へ。
私はぽつんと一人、部屋の中。
むむむ……やることが無いぞー。お仕事来ーい。
ただし、急ぎじゃないやーつ。
「すみません、ステラさんはお仕事中ですか?」
うお!? 本当に来たか!?
扉を軽く叩いて入ってきたのは。
金髪の巻き毛が印象的な、青い目の受付嬢メアリ様。
様付けなのは、彼女の実家が貴族だから。
同期の間での密かな呼び方だ。
美女揃いな受付嬢の中でも一際目立つ容姿に加えて仕事もデキる淑女で。
上司殿と並んだら、それはもう眩しくて直視できない神々しい絵画だと、お客様方にも大変好評です。
「私は一応、待機中ですが。どのようなご用件でしょう?」
「ああ良かった。今、古書をたくさんご覧になりたいと仰っている旅の方が受付のほうにいらっしゃるのですが、人手が足りなくて困っているのです。代理書監として、ステラさんにその方の付き添いをお願いしたいのですが、よろしいかしら?」
古書を大量に読みたがる旅人?
考古学者の類いかな。
どうしたもんかな〜。
本格的に管理室を空けちゃうけど、この場合は……うん。仕方ないよね。
お客様第一!
「付き添いはお引き受けしますが、管理室への用事があれば、そちらも私に直接持ってきていただけますか? 現在、室長が留守にしているもので」
「承知しましたわ。ありがとうございます、ステラさん」
うう。素直な笑顔が眩しい。
「お待たせしまし…… あ。」
管理室にしっかり鍵を掛けてから、急いで受付まで行くと。
そこでは、先日ぶつかった黒髪金目の男性が待っていた。
なるほど。
閉館間際に来てたのは、営業時間を知らない旅人だったからなのね。
「先日は失礼しました」
私が腰を折って謝罪すると、男性は微笑んで「いえ」と軽く首を振った。
「本日はお客様が申請されました古書の閲覧を許可する代わりに、館内での監視役として閲覧に付き添わせていただきます。ステラとお呼びください」
「承知致しました。私はクロスツェルと申します。よろしくお願いします、ステラさん」
口調も仕草も礼儀正しい人だなあ。
洗練されてて無駄がないって言うの?
女性にも見えそうな中性型だけど、これはこれで格好いいかも。
「では、クロスツェルさん。こちらへどうぞ」
古書っていうのは、確認されてる限りでは世界に一冊しか現存してない、希少性と歴史的価値で天文学的な金銭を流動させる貴重な書物達の総称。
活版印刷の世界的普及と、複数同時に製本できる
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