忘却のレチタティーボ 2
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単純に記録だけなら、最短を更新したと思います。
三分で取ってこれる内容と違うわ、あんなの!
「まずまずか。座って休んで良し」
「はー……い」
書類を提出する為に管理室から出ていく鬼室長の背中を見送って。
さっきまでベッド代わりだった椅子に、もう一度ぐったりと座り込む。
疲れた。
もおー、居眠りは絶対にしないぞーっ!
しかし、閑古鳥が鳴いてたとはいえ、仮にも仕事中に昔の夢を見るとか。
職場に慣れすぎたかのぅ?
スイ、今頃はどうしてるのかな。
あの日以降、全然姿を見なくなっちゃった。
友達だと思うなってコトかしら。
ぅぐっ。
そ、それはかなり心臓に厳しいぞ……っ。
悲しいじゃないか!
「口を開けば愚痴ばっかりだったしなあ。嫌気が差したとかかなあ。なら、仕方ないのかなあ」
もう十年以上経つし、野生じゃ生きてるかどうかも怪しいけどさ。
恋しいなあ、白もふ。
「何をぶつぶつ言ってるんだ、君は」
「あ。すみません、室長」
提出から戻ってきた室長に睨まれてしまった。
怒ってはいないんだろうけど。
足先とか背中とかが冷えるんで、ジト目はおやめください。
「お茶でも淹れてきましょうか」
室長専用の椅子に腰掛けた上司殿へ、笑顔で歩み寄るが。
結構だ。と、一言でスッパリ斬られてしまった。
「座って待機」
「はい」
大人しく指示に従って着席。
昨夕は、貴方はどちら様ですか状態で私を混乱に陥れてくれた上司殿も。
今朝からは平常運営です。
仕事に厳しく、仕事に熱心な、敬愛すべき仕事人間。
昨日のは本当に何だったのか。
慣れてる分、こっちのほうが安心するけどね。
あ。怒られるのだけはイヤよ、もちろん。
「はあ……」
室長が机の上に置いてあった書類を手に取って眺め、ため息を吐いた。
多分、お誘いの手紙だ。
上司殿は、他の部所どころか、書蔵館本部からも引く手数多なんだよね。
全部断ってるみたいだけど。
こんな、机二つと椅子二つ、書類入れ一つでいっぱいになっちゃう場末の狭い管理室より、もっと厚待遇な職場が山ほど用意されてるっていうのに。
なんだってわざわざ、こんな所に留まってるんだか。
頭が良い人の考えることは、さっぱり解らん。
「ステラ」
「はい?」
「今日も送る。俺の終業時刻になるまで、ここで待機」
「…………」
また、ですか?
また、あの謎の言動をされるおつもりですか、上司殿。
「返事」
「……あの、私なら大丈」
「へ、ん、じ」
「…………はい」
肯定しか認めないおつもりですか、そうですか。
いったい何なんですか。
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