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逆さの砂時計
忘却のレチタティーボ 2
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中、なるようにしかならないって教えてくれたのは。
 他ならぬ大人達なのにね。

「あ〜……、ひっどい考え方」

 こんなコトばっかり考えてたら、そりゃ育つもんも育たないわ。
 これ、完璧に自己擁護(じこようご)じゃん。
 できないもんはできないんだから、しょうがないじゃない!
 って、駄々っ子か私は。

 前に進んでるつもりで、逃げ道だけをせっせと掘って、地中に潜り込んで「もーヤだー!」って、「誰か助けてー!」って泣いてるの。
 バカみたい。
 そんな所には誰も居ないのに、ね。

「ごめんよ、スイ。盛大に八つ当たりしちゃった」

 古びた無人教会の、正面扉の前。
 私の隣に座って首を傾げてる、可愛いウサギさんの頭を撫で撫でする。

 真っ赤なお目目が愛らしい、真っ白な体毛のころころしたウサギさんは、最近懐いてくれた野生の子。
 私が教会に来ると、必ずひょこっと顔を出してくれる。
 オスなのかメスなのか、私には見分けがつかなかったから。
 どっちでも通じそうな『スイ』って名前を付けてみた。
 呼びかけには反応するし、受け入れてくれてるんだろう。多分。

「むぎゅーってさせて、むぎゅーっ」

 膝の上に乗せて、背中から抱きしめると温かい。
 もふもふは癒しだ、癒し。
 白もふは私の友達……とか言ったら、迷惑かな?
 どうなの、スイさん。

「うむ。なかなかに、寂しくなってきたぞ」

 空もだいぶ赤くなってきたし、もうすぐ暗くなっちゃうな。
 遅くなるとまた、お母さんの頭に幻の角が生える。
 寝た鬼を起こすこともあるまいて。
 仕方ない、帰るとしますか。

「また明日ね、スイ」

 名残惜しいが、ウサギさんを膝から下ろして



「起きろ、ステラ」

 うわぉビックリ。

「私、今、寝てました?」
「熟睡」
「すみません」

 管理室で待機中、背もたれに頭を預けた姿勢で居眠りをしていたらしい。
 首が痛い。
 私の背後に立って上からまっすぐ見下ろしてくる氷色の目が怖い。

 ……っていうか……え? あれ?
 ま、まさか私、室長に、寝顔を見られ……っ!?

「新しい書類要請がきた。三分以内に取ってこい」
「ぶ!?」

 ばふっと、紙切れ三枚を顔に乗せられる。
 三枚で三分!?
 一つの用件につき、所要時間一分ですか!?
 無茶を言うな、鬼ーっ!

「急いで行ってきます!」

 慌てて立ち上がり、要請内容を確認しながら駆け出す。
 ぅげ! ずいぶんと古い書類をご希望なのですね!?
 三分とか無理ーっ!



「きっちり三分が余計だな」
「……すみ、ま、せん……っ」

 六分ですか。
 六分掛かりましたか。

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