忘却のレチタティーボ 2
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。呼び掛けに反応するし、多分受け入れてくれてるんだろう。
「むぎゅーってさせて、むぎゅー」
膝の上に乗せて背中から抱き締めると温かいし、もふもふだし。癒しだ癒し。
白もふは私の友達……とか言ったら迷惑かな? どうなのスイさん。
「うむ。なかなかに寂しくなってきたぞ」
もうすぐ暗くなっちゃうな。遅くなるとまたお母さんの頭に幻の角が生える。寝た鬼を起こす事もあるまいて。
仕方ない、帰るとしますか。
「また明日ね、スイ」
名残惜しいが、兎さんを膝から下ろして
「起きろ、ステラ」
うわぉビックリ。
「私、今、寝てました?」
「熟睡」
「すみません」
管理室で待機中、背凭れに首を預けて居眠りしてたらしい。首が痛い。背後に立って上から真っ直ぐ見下ろす氷色の目が恐い。
……って言うか…… え?
ね、寝顔、見られ……っ!?
「新しい書類申告が来た。三分以内に取って来い」
「ぶ!?」
ばふっと、紙切れ三枚を顔に乗せられる。
三枚で三分!? 一用件につき一分ですか無茶言うな鬼ーっ!
「急いで行って来ます!」
慌てて立ち上がり、申告内容を確認しながら駆け出す。
ぅげ! 随分と古い書類をご希望なのですね!? 三分とか無理ーっ!
「……きっちり三分が余分だな」
「……すみ、ま、せん……っ」
六分ですか。六分掛かりましたか。単純に記録だけなら最短を更新したと思います。
三分で取って来れる内容と違うわ、あんなの!
「まずまずか。座って休んで良し」
「はー……い」
書類提出に向かう鬼室長の背中を見送り、居眠り椅子にぐったりと座り込む。
疲れた。もー居眠りはしないぞーっ!
しかし、仮にも仕事中に昔の夢を見るとか……職場に慣れすぎたかのぅ?
スイ、今頃はどうしてるかな。あの日以降全然姿を見なくなっちゃった。友達だと思うなって事かしら。
う。そ、それはかなり心臓に厳しいぞ……っ。悲しいじゃないか!
「愚痴ばっかだったからなー。嫌気が差したとかかなー。なら、仕方ないかなぁ」
もう十年以上経つし、野生じゃ生きてるかどうかも怪しいけどさ。
恋しいなぁ、白もふ。
「何をぶつぶつ言ってるんだ、君は」
「あ。すみません、室長」
提出から戻った室長に睨まれてしまった。
怒ってはいないんだろうけど、足先とか背中とか冷えるんでジト目はお止めください。
「お茶でも淹れて来ましょうか」
室長専用の椅子に腰掛けた上司殿へ歩み寄るが、結構だ。とスッパリ斬られてしまった。
「座って待機」
「はい」
大人しく指示に従って着席。
昨日の夕方は誰ですか貴方状態で混乱させてくれた上司殿も、今朝からは平常運営です。仕事に厳しく仕事に熱心な、
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