3.大人同士の話って子どもには退屈なんだよ!
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なのはがテーブルに頭をごんとぶつけたがアリサとすずかと『しー』とやるだけ。涙目のなのははこくこくと頷いた。
大人たちの輪まで約三メートル。気付かれないよう少しずつ少しずつ進んでいたせいで時間がかかったが、ようやく話している内容が鮮明に聞こえる距離まで来た。
どれどれ…?
『いやぁ。ケンジくんはもう夜中に一人でトイレに行けるんですか。しっかりしてますね。ウチのなのはは全然ダメで、いつも私か桃子を起こして行くんですよ』
『ウチのすずかは恥ずかしいのか、姉の私でなくファリンかノエルについて行って貰うんですよ。しかも私には言わないように口止めまでして』
『ウチのアリサなんかはどうも意地っ張りでしてね。暗いところが怖いのに誰かに付き添ってもらうなんてみっともないからとトイレを我慢して、結局おねしょをしてしまうんですよ』
「「「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」
なんとまあベストタイミングでいい話題をしているんだ。
赤面して悲鳴を上げた彼女たちはそれぞれの保護者の下へ走っていって文句を言っている。そして生暖かい笑みを浮かべた大人がそれを軽く受け流す。子どもは親には勝てないのさ。
今の話の流れから察するに、子どもの普段の生活について情報を交換していたらしい。俺は普段からそれなりにしっかりしていたから面白おかしく話題にされることは無かっただろう。ネタにされなくて本当によかった。
『…………………』
「―――――」
重々しい沈黙がこの卓上に展開している。
思わぬところから自らの恥部が曝け出された少女たちはすっかり意気消沈している。なのははわざわざ靴を脱いでまでソファの上でひざを抱え顔を埋め、すずかは両手で顔を覆い、アリサはテーブルに突っ伏している。
仕方の無いことなのかな、と思いつつおかわりしたジュースを啜る。
「…違うのよ」
と、ここで。恐らくは一番ダメージが大きかったであろうアリサが呟いた。
「別に暗いのが怖いんじゃなくて、あの日はたまたま寝る前に心霊番組を見ちゃって、ふだんなら気にならないカーテンの隙間とかクローゼットがやけに気になって、ベッドから出るに出れなくて……」
なにやら必死で弁解しようとしているのだが、しかし何一つ事態はいい方向へ向かってはいない。むしろ墓穴を量産している。もういい。もういいだろッ!
「……まあ、なんていうか」
アリサの独白のお陰でさらに空気が重くなった気がして、それをなんとか払拭しようと頑張った結果、
「寝る前には…ちゃんとトイレに行こうな」
こんなことしか言えなかった。
直後に、赤面したアリサ、同じように赤面したなのはとすずか、三人から同時に糾弾されてしまった。その反応から察するに、おそらく二人もやってしまったことがあ
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