忘却のレチタティーボ
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助かる。暇 時々 激務な職場でも長続きしてる理由は、こういう居心地の良さにあるのかも。
怒るとすっごい恐いけどね!
殴る蹴る怒鳴るの暴力は無いけど、触ったら切れそうな氷色の瞳で静かに睨まれてごらんなさいよ。
凍えるから。絶対凍え死ぬから。
神様。上司殿に割り振った美しい容姿の半分を無かった事にしてください。綺麗な人がキレると、怒られるほうの寿命が減るんですよ縮むんですよ。
ちなみに同じ灰系の髪でも、こっちはくすんで汚い鼠色。あっちは鏡みたいな湖面の銀色。
なんだかねぇ、もう。
ふこーへーだああぁーっ! 手抜きすんな神様ぁーっ!
「……むなしい。」
実際は美しい容姿になりたいんでもなきゃ、自分の容姿に不満があるんでもない。満足してもいないけど。
不満の振り。無い物ねだりの振り。全部振り。何処にでも居る普通の人間の振りをしてるだけだ。
上滑りしていく毎日が、何事も無く通過するだけ。
「……帰ろ」
外はきっと真っ赤に染まっているだろう。
最近購入した木造一戸建てには、甘いお菓子を買い置きした。夕飯は抜いてお菓子の宴でも開こう。
ごめんねお母さん。不摂生で。
「ステラ」
「? はい?」
廊下を少し進んだ所で、管理室の扉を開いた室長が私に声を掛けた。珍しい。
其方を見れば、管理室に鍵を掛けてから早足に寄って来た。
「送る」
「は?」
「君は最近、一人暮らしを始めたと聞いた。女性の一人歩きは危険だ。家まで送ろう」
引っ越しについては同期の女性にしか話してなかったから、出所は探るまでもないが……何故にいきなり?
「そんな、お手数を掛ける訳には」
「家の手前までだ」
あ。送り狼を疑ってると思ったのかな? そんな心配するほど自惚れてはおりませんよー。此方、彼氏いない歴長いもので。異性の目に魅力が無いのは重々承知しております。
てか、私が異性でも私に声を掛けようとは思わんだろうな。
同性にも魅力無し。残念すぎる。
「そういう事ではなくですね。私、真っ直ぐ帰るつもりは……」
「知っている」
「へ? って、室長!?」
またしても腕を引かれて、職場をズンズンと離れて行く。
なんだなんだ、何事なんだ? 擦れ違う人達に見られてるんですけど!? 職場に入る時ならともかく帰りにこれは止めてくださいよ貴方自分の容姿再度確認して? 女性の羨ましー視線が全部こっちに来るんだってば! 無駄に敵を作りたくないのよ私。見目良い男の傍に居ても赦されるのは欠点知らずの美女だけ……って謎の女社会規則守らせてーっ!
「あ、すみません!」
書蔵館総合入り口で、よろめいた拍子にお客様とぶつかってしまった。
……って、これはまた綺麗な顔の男性だな。室長は格好いい系美人だけど、
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