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珠瀬鎮守府
響ノ章
警備隊
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 体は海中へと沈み行く。海水とは違う何かが体を包む感覚。それを確かに、肌で感じた。そう、感じられた。
 笑みを浮かべる。笑う。感じられるならば生きている。その全身が今生きている。私は水面へと向かい泳いだ。仄暗い海水の中、水面は薄ら輝いていた。
 海面へと出ても、濃紺の世界に変わりはなかった。ただ、天上には月が出ていた。これのお陰で、海面を見据えたままいられたのだろう。衣服は海水を吸って酷く重く、発動機の類は一切の反応を私に返さない。私は武装の類を外して海面に漂った。遠く砲撃音が聞こえる。鎮守府正面海域の戦闘は未だ継続されているようだ。最上の言通り、鎮守府内にも被害は出てしまっている事だろう。
 私は、無力だった。


 潜水艦からの追撃は無く、私は遊泳にて鎮守府を目指す。武装の類は無いので接岸する必要もないので大回りし、護岸されていない少し離れた位置に上陸した。
 そのまま、浜で大の字になって空を仰ぐ。一条、否、一切の雲さえない今日、満月とまでは行かずとも大きな月は見ものだった。現実逃避、そんなことはわかっている。だが、足は動いてはくれない。
 木曾は死んだに違いない。そうして鎮守府内には被害が出ている。死者も出ていることだろう……そうならないために、私達が居るにも関わらず。
 砂浜を拳で叩く。何が艦娘だ。
「つ……ああ!」
 疲労と鈍痛のせいで倦怠感が纏わりつく体を何とかして立ち上がらせる。泳ぐために今や下着となっていたが羞恥の類を感じる暇はない。装備を、武器を得なければならない。まだ、皆戦っている。


 鎮守府内につくまで人に会うことなかった。鎮守府は破棄されたのかと思った矢先、それに気づいた。
「嘘……」
 思わず驚きが口をついて出た。提督が使うはずの戦闘指揮所は一階が大きく破損していた。湾内に既に深海棲鬼が侵入し、攻撃を加えたのか。
 私は崩れかけた建物の中に飛び込んだ。廊下を駆けて、戦闘指揮所の扉を開ける。中は……瓦礫に覆われていた。そうしてその中に、こちらに背を向けて佇む人が、一人。
「鳳翔さん」
 ゆっくりと彼女はこちらを振り返った。服や髪は粉塵で汚れ、その手はぼろぼろだった。ただ、顔は暗くない。
「響ちゃん、どうしたのその格好」
「発動機をやられました。体は無傷だったので武装を全て捨て浜まで泳いで帰投しました。鳳翔さん、これは……」
「見ての通り、深海棲鬼の攻撃を食らったのね。恐らく戦艦の主砲を……けど、この部屋に死体はないわ。壁に僅かな血痕があるだけ、それも手についたものがこびり付いたものよ。ここは破棄されたのね」
「そうですか……私は装備を換装して再出撃します」
「止める権利は私にないわ。ただ、その格好で走り回るのは止めておきなさい」
 そう言って鳳翔さんはその上の服を私に渡した。彼女は
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