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SAO−銀ノ月−
第八十三話
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いるらしい。

「里香、ガンアクションの経験とか」

「専門外よ。作る方はともかく……ちょっと銃って中身気になるわよね……」

 ゲームの名前と同等に物騒なことを言っている里香に苦笑いしつつ、俺は率先してベテラン刑事装備を装着していく。コートの代わりにジャケットを――このジャケットをゾンビに触られるとポイントが減るそうだ――装備すると、見るからに玩具のような銃をチェックする。

「へぇ、何だか様になってるじゃない。……ガンアクション、経験あるの?」

 ――何故か里香のその質問からは、先程までとは違う『重み』が感じられた。まるであのデスゲームの中で、幾度か交わした死に対しての問答のような……

「……今のバイトが、まさにガンアクションのゲームなんだ」

 真実を語っているとはとても言えないが、嘘はついていない、我ながら卑怯で曖昧で残酷な返答。出来るだけ平静を装って出したその返答に、里香は一瞬だけ――見落としてしまいそうなほんの一瞬だけ、その表情に影を落とした。

「それなら、いーい練習になるじゃない。頼りにしてるわよ?」

 しかし、それも本当に一瞬だけ。まるで俺の気のせいだったかのように、里香は新人用の装備を着込みながら、朗らかに笑いかけてくる。ならばこちらも……気づかなかった振りをして。

「ニュービーの可愛い子をしっかり守るのが仕事だからな」

 『可愛い子』を強調しながら――本当に自分でも似合わないクサいセリフを吐くと、照れくさそうに髪の毛をクシャクシャにしつつ、失言だったと病院フロアへの入口に向かっていく。そうしていると、手に温かい感覚を感じ、里香の気配をかなり近い場所に感じた。

「不意打ち、ありがとね。……それじゃ、行きましょ!」

 こうして、ブリーフィングルームから病院フロアへの扉を開けると、遂に完全現実ガンシューティング《Dead and Dead》が幕開けとなった。まずは病院フロアに改装されている、次の階層への階段が目の前にあったが……もうゲームは始まっているんだ、とばかりに、そこから雰囲気作りは始まっていた。

「やっぱ暗いわね……」

 夜の学校と並び、人間の恐怖という根源的な感覚にダイレクトに攻撃してくる、廃墟となった病院という環境。流石に俺も里香も虚勢は張っているものの恐ろしく、どうしてもその歩幅は小さくなってしまう。そんな人間の恐怖に誘われるように、その化け物たちはそれを餌としようと向かってくる。

『ウゥゥゥ――――』

 それらしい雄叫びをあげながら、物陰からゆっくりとゾンビが一体現れる。ゾンビらしくその動作は緩慢で、これならば自分でも当てられる――と、銃を構えたところで。

「そこ!」

 今までベテラン刑事の後ろに隠れていた新人が、ゾンビを見る
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