31部分:第三十一章
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第三十一章
「これで五人です」
速水はまたしても忌々しげに述べた。
「遂に完全に裏をかかれ続けましたね」
「そうね、薔薇も全て揃ったわ」
「はい」
「チェックメイト、ってところかしら」
「いえ、それはまだです」
しかし速水はそれは否定した。
「だが打つ手はありますよ」
「五人の命が奪われたというのに?」
「はい、まだ手はあります」
「それは何かしら」
「いつもの貴女のやり方ですよ」
速水はここでうっすらと笑ってこう述べた。
「私の?」
沙耶香はその言葉に少し考える目になったがすぐにその意味を察した。そのうえでうっすらと笑ってきた。
「いいのかしら、それで」
笑ってこう述べる。
「私のやり方は貴方には合わないわよ」
「何、合わせますよ」
しかし役の返事は落ち着いたものであった。もう慣れているといった感じさえ漂っていた。
実は彼は沙耶香とは長い付き合いである。その間に今のように共に事件にあたることも多かったのでそれで慣れているというふうに言えたのである。
「御心配なく」
「じゃあわかったわ」
沙耶香はその言葉を聞いて頷いた。
「それでいくわよ。いいわね」
「了解です。そしてまずは」
「彼女ね。にしても」
木の上のメイドを見る。非常に美しい顔である。プロポーションもいい。沙耶香の好みの中の一つの女の子であった。彼女はそれが残念でならなかったのだ。
「残念なことね」
「そして」
「惨いことね」
犯人に対しても憤りを感じる。出し抜かれたことに。沙耶香は人の生死や倫理には捉われはしない。だがそれでも出し抜かれたことには不快なものを感じる女であった。そして今がそれであった。彼女にとって犯人は何としても倒さなくてはならない相手となっていたのであった。
「私の御馳走を攫ってくれたこと、後悔させてあげるわ」
そう言うと遺体を収めて屋敷の中に戻った。五人の犠牲者、手紙にあった通りになった。沙耶香はそれに忌々しいものを感じていた。だが。決して諦めてはいなかったのであった。
二人は屋敷に帰るとすぐに行動に移った。屋敷の中にある誰もいない一室。そこは屋根裏であった。
「ここならいいですね」
「そうね」
二人は頷き合った。まずは速水がカードを出した。
「まずはこれを」
それは運命の輪のカードであった。
「そして私はこれを」
沙耶香は手に黒い炎を出してきた。二人はそれを合わせる。
「ではいいですね」
「何時でもいいわ」
その二つを合わせるとカードの中の運命の輪が回りはじめた。そこに黒い炎が交わっていく。そして輪は炎の輪となったのであった。黒い炎の輪に。
二人はそれに対して何か詠唱をしていた。それが終わった時はもう夜であった。
二人は夜の闇の中に姿を消した
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