暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
翔べない鳥の翼
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 ベゼドラが不機嫌だ。
 理由は判ってる。重要そうな手掛かりを見付けたのに、深く追及もせずあっさりと其処から離れたからだ。
 しかし、あの場合は無理矢理にでも引き剥がさないと、ベゼドラが彼女に襲い掛かっていた。自分も一瞬、本気で問い詰めそうになったのだ。彼が冷静でいられたとは思えない。彼女から渡された水色の宝石と不思議な歌が無ければ、暴力に訴えてでも根掘り葉掘り総てを話させていただろう。自分がそれを止められたかどうかは怪しい。本音では、今直ぐ引き返して順序良く丁寧に納得いくまで訊きたいくらいなのだから。
 ただ……彼女にベゼドラの声は通じなかったらしい。
 彼の声は心の隙間に滑り込んで直接語り掛ける物。つまり、彼女の心には曇りも迷いも空白も無かったのだろう。自分も接してみた限り実直で素直な女性だと感じた。これ以上は何も知らないという言葉に、裏も表も偽りも無い気はする。仮にベゼドラが彼女を瀕死に追い込んでも、多分新しい情報は期待できない。
 ……と、自分に言い訳しながら、宝石が示した東へと足早に向かう。
 「アリアを助けてとは、どういう意味でしょうね。彼女に伝言を託した女性……何者なのでしょう?」
 「それをアイツから聞き出せば良かったんだろうが! 何考えてんだテメェ!? 遊んでんじゃねぇんだぞ!!」
 苛立つのは当然だ。苛々……は、とっくに突き抜けているか。完全に、とまではいかないにしても、我を忘れかけて怒っている。
 「……言葉は選びなさいと常々忠告している筈ですよ、ベゼドラ。貴方がどう思おうと勝手ですが、ロザリアを捜す邪魔だけはしないでください」
 「邪魔してんのはテメェじゃねぇか!」
 「いいえ。彼女をどうにかするよりもまず、これの意味を考えるべきです」
 袋に入った小さな宝石をベゼドラに掲げて見せる。
 「「アリア」を「助けて」。つまり、これを託した女性はアリアを好意的に知る人物だ。先程の光にしても、神代に繋がる背景の持ち主なのは間違いない」
 「だから何だ」
 ……神代の悪魔でありながら、落ち着いて物を考えられない自分よりも鈍いのか……。
 「確実にそうとは言えませんが、あの光はアリアを指している可能性があります。そうでなくてもアリアに直接繋がる道かも知れない。急がなくては見失ってしまいます」
 「可能性? かも知れない!?」
 「言いたい事は解りますが、彼女を締め上げても同じだと思います。彼女の意思の強さは貴方のほうが理解している筈だ。違いますか? 悪魔ベゼドラ」
 射殺さんばかりの殺意溢れる瞳で自分を睨み……舌打ちしながら積もった雪を蹴り上げた。
 「……あの歌にも意味があるのでしょう。所々、気になる言葉が混じっていましたし。貴方は聞き覚え」
 「知らん!」
 「……でしょうね」
 この様子では今の
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